第4話「第一印象」
4月11日
朝、教室に入ると
いつもと同じくらいの声だった
特に変わったことはなかった
白石も、いつも通り席にいた
昨日と同じように、何人かが話しかけていた
でも、少しだけ違っていた
質問の内容が、少し変わっていた
「好きな食べ物は?」
「休日って何してる?」
どうでもいいことだった
でも、昨日より少しだけ踏み込んでいた
白石は、同じように答えていた
少し考えてから
ちゃんと答える
誰に対しても同じだった
笑い方も、声も、間も
違いがなかった
坂本はずっと話していた
冗談を言って
白石が少しだけ笑っていた
「お前、笑うと普通やな」
坂本が言っていた
白石は少しだけ首を傾げていた
「普通って、何?」
そのやり取りで、周りが少しだけ笑った
軽い空気だった
黒田も近くにいた
特に話してはいなかった
でも、ずっと聞いていた
たまに短く話す
「それ、つまんねえな」
誰に向けたわけでもない言葉だった
でも、白石は少しだけ笑っていた
「そうかも」
否定しなかった
岡崎は、少し違った
質問が多かった
「彼氏いたことある?」
周りが一瞬だけ静かになった
普通なら聞かない質問だった
白石は少しだけ考えた
「ないです」
それだけだった
岡崎は笑っていた
「へえ、意外」
その言い方は軽かった
でも、少しだけ意味があった気がした
一ノ瀬は、遠くにいた
窓際の席で、外を見ていた
話には入っていない
でも、完全に無関係でもなかった
一度だけ、視線が向いた
すぐに外に戻った
神谷はノートを開いていた
でも、書く手が止まっている時間が長かった
話を聞いているように見えた
たまに視線を上げて、白石を見る
すぐに戻る
何かを考えている顔だった
藤井は、少し離れた場所にいた
話には入らなかった
でも、ずっと見ていた
視線を外すタイミングが遅かった
何度か、話しかけようとしていた
結局、やめていた
昼休み
白石は、また同じ場所にいた
でも、今日は一人じゃなかった
坂本と黒田が近くにいた
岡崎もいた
自然に輪ができていた
「前の学校ってさ、楽しかった?」
誰かが聞いた
白石は少しだけ考えた
「……普通でした」
その言葉は、昨日と同じだった
でも、少しだけ違って聞こえた
理由は分からない
「じゃあ、こっちは?」
坂本が聞いた
白石は、少しだけ間を置いた
「まだ分からないです」
それだけだった
でも、その“間”が残った
短かった
でも、なかったわけじゃない
放課後
教室を出るとき
少しだけ騒がしかった
誰と帰るか、という話をしていた
「一緒に帰る?」
坂本が軽く言っていた
白石は少しだけ考えていた
その時、黒田が先に歩き出した
「帰るぞ」
それだけだった
誰に言ったわけでもなかった
でも、坂本がついていった
岡崎もついていった
白石は少しだけ迷ってから、歩き出した
同じ方向だった
藤井は少し遅れてついていった
一ノ瀬はいなかった
神谷は最後に教室を出た
帰り道
特に会話はなかった
でも、同じ道を歩いていた
距離は少しずつ変わっていた
近づいたり
離れたり
一定ではなかった
白石は、その中にいた
誰の隣にもいなかった
でも、誰からも離れていなかった
それだけだった
家に帰った
今日も特に変わったことはなかった
でも、少しだけ整理した
坂本は、話しやすいと思っている
黒田は、気にしていないようで見ている
岡崎は、踏み込んでいる
神谷は、観察している
藤井は、何もしていない
一ノ瀬は、関わっていない
全部違っていた
同じ時間にいたはずなのに
受け取り方が違っていた
白石は、同じだった
変わっていなかった
それでも——
——それぞれの中で、少しずつ違って見えている




