第8話「見ている」
4月20日
朝は曇っていた
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教室の光が少し弱かった
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そのせいか、全体が少し静かに見えた
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白石はいつも通りいた
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でも、今日は少しだけ違った
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誰かが見る回数が増えていた
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気のせいかもしれない
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でも、そう見えた
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坂本はいつも通り話していた
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黒田は窓の方を見ていた
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藤井は少し遅れて教室に入った
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神谷はノートを開いていた
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一ノ瀬はまだ来ていなかった
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岡崎は机に座っていた
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授業が始まる前
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白石は一人で窓の外を見ていた
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その後ろ姿を見ている人がいた
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それが誰かは分からない
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でも、一人じゃなかった気がした
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授業中
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教科書を読む時間があった
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白石の番になった
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昨日より少しだけ落ち着いていた
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でも、声は同じだった
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聞きやすい声だった
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それを聞いている間
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黒田がずっと見ていた
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気づいていたかは分からない
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坂本も見ていた
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岡崎も見ていた
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藤井は一度だけ目をそらした
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神谷はノートに何かを書いていた
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でも、時々顔を上げていた
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誰も、長くは見ていない
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でも、誰かは必ず見ていた
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昼休み
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白石は教室にいた
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その周りに人がいた
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坂本が一番近かった
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その横に黒田がいた
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少し離れて岡崎がいた
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藤井はさらに後ろだった
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神谷は少し離れた席だった
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一ノ瀬はいなかった
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会話はあった
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でも、途切れ途切れだった
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坂本が言った
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「なんかさ」
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少し間を置いて
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「お前、よく見られてるよな」
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白石は少しだけ首を傾げた
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「そうですか?」
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黒田がすぐに言った
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「見てるっつーか、見てるだけ」
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岡崎が笑った
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「何それ」
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「いや、意味はない」
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黒田はそう言った
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藤井は黙っていた
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でも、視線は外れていなかった
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神谷が静かに言った
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「見てるんじゃなくて、見える位置にいるだけだろ」
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坂本が少し笑った
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「ややこしいな」
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その時だった
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白石が少しだけ笑った
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「みんな、よく見ますね」
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それだけだった
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軽い言い方だった
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でも、少しだけ空気が止まった
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理由は分からない
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すぐに戻った
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会話は続いた
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でも、その一言だけ残った
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放課後
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白石は一人で教室を出た
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廊下は少しだけ混んでいた
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誰かが通り過ぎるたびに視線があった
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気のせいかもしれない
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でも、消えなかった
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坂本が後ろから走ってきた
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「おーい、帰るん?」
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白石は振り向いた
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「はい」
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それだけだった
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黒田は少し離れたところにいた
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一瞬だけ見た気がした
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岡崎は笑っていた
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藤井は見ていなかった
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神谷はノートを閉じていた
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一ノ瀬はいなかった
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帰り道
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坂本と少しだけ話した
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いつも通りの会話だった
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でも、途中で坂本が言った
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「お前さ」
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「うん」
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「なんか、周り動かしてるよな」
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白石は少しだけ止まった
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「動かしてる?」
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「いや、別に悪い意味じゃなくて」
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坂本は笑っていた
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「なんとなくな」
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白石は少しだけ考えた
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「そんなこと、ないと思います」
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そう言って歩き出した
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坂本はそのあと黙っていた
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その沈黙が少し長かった
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家に帰った
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今日も特に変わったことはなかった
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でも、少しだけ分からなかった
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見られているのか
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見ているのか
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それとも、ただそこにいるだけなのか
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——その違いが、まだ分からない
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