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嫁ぐ前のひと夏、雨の日だけ会えた君へ ~雨に咲くダリア~

作者:中原九尾
最終エピソード掲載日:2026/10/04
「秋に、結婚するんです。だから梅雨が明けるまでに、この家を片付けたくて」

 六月、雨の降る山あいの町。
 実家の工務店で働く朝倉遼(25)は、古民家の修繕の見積もりに訪れた先で、縁側に座る濡れ髪の女性と出会う。
 宮下灯(23)。春に亡くなった祖母の家を売るため、ひと夏だけ町に帰ってきた彼女は、秋に嫁ぐことが決まっていた。

 工期は、梅雨明けまで。
 雨の日は、外の工事ができない。
 だから雨の日だけ、遼は理由をつけて彼女の家へ通い、提灯の吊るされた座敷で、並んで湯呑みを傾けるようになる。

 荒れた庭の片隅には、祖母が最後に植えた深紅のダリア。
 その花言葉は「華麗」、そして――「裏切り」。

 子どもの頃、二人で秘密を叫んだ古井戸。
 母に捨てられた夏に、彼女が立てた誓い。
 夢から逃げ帰った遼が、ずっと見ないふりをしてきた本心。

 雨が降るたびに近づいて、雨が降るたびに、終わりが近づく。
 彼女は、嫁いでいく人だ。
 好きだと言えば、彼女の誓いを壊してしまう。

「今年は、たくさん降るといいな」

 梅雨が明けたら、この恋は終わる。
 それを最初から知っていた二人の、ひと夏だけの物語。

――――――――――
※全10話・完結済み。
※男性視点の、切ない現代恋愛です。ハッピーエンドではありませんが、余韻の残る結末を目指しました。
※他サイトでも掲載しています。
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