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閉鎖された巨大集落にある刑務所で

作者:こうた
最新エピソード掲載日:2026/09/08
博打をやめて、普通の人生を送りたかった。

彼女を作って、結婚して、幸せな家庭を築きたかった。

35歳のゆうさくには、そんなささやかな夢があった。

だが、地元の仲間たちに誘われ続け、博打から抜け出せない。会社では嘘を重ねて金を借り、気がつけば借金は一千万円を超えていた。

そんなある日、仲間の一人が言った。

「強盗すれば、遊ぶ金なんていくらでも手に入る」

断りたかった。

それでも、ゆうさくは仲間に流され、犯行の準備をしてしまう。

そして犯行当日。

待ち合わせ場所に現れた仲間は、誰一人いなかった。

一人で火炎瓶を投げ込んだ家から逃げてきた家族。

その中にいたのは、かつて自分を何度も助けてくれた会社の上司だった。

パニックに陥ったゆうさくは、取り返しのつかない罪を犯す。

仲間たちは強盗など知らない顔で合コンをしていた。

逮捕され、裁判にかけられ、すべての恨みを一身に受けたゆうさく。

そして彼が送られたのは――日本国内に存在する、地図にも記録されていない刑務所だった。

そこには刑務官がいない。

監視カメラもない。

囚人は自由に刑務所を歩き、隣接する巨大集落にも自由に出入りできる。

だが、その集落は高さ数十メートルにも及ぶ巨大な壁によって外界から完全に閉ざされていた。

村人たちは全員、奇妙な仮面を被っている。

そして一年に一度、この集落では「祭り」が行われる。

祭りに必要なのは――人間。

外の世界では人生を捨てた男だったゆうさくは、この場所で初めて思う。

「外に出たい」

「もう一度だけ、やり直したい」

しかし、彼はまだ知らなかった。

この刑務所にいる囚人たちは、なぜ誰も逃げようとしないのか。

村人たちは、なぜ仮面を外さないのか。

そして――

この閉ざされた集落で、毎年何人もの囚人が消えている理由を。

一度入ったら、二度と外へ戻れない。

罪を犯した男が最後に望んだのは、罪のない人生ではない。

ただ一度だけ――

「普通に生きること」だった。
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