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マジで俺を巻き込むな!!  作者: 電式|↵
ハウス・クリーニング
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第2話-15 ハウス・クリーニング 裏世界の住人

さて、時間は飛んで買い物帰り。

時刻は午後8時を回ったところだ。

さっき携帯で確認した。


日は沈み、遠くの空はゆっくりと紫色に変わっているが、

俺達の頭上には、真っ黒い雲が覆っている。

恐らく、出発前に俺がベランダから見た入道雲が流されてきたのだろう。


辺りは暗く、帰り道につく住宅街の電灯が地面にスポットを当てている。


俺の両隣には、例の《人の形をしたなにか》が歩いている。


「結局、どんなものを買えばいいのか分からなかったぁ……」


隣で嘆いている麗香の肩には大型のマイバッグがかかっている。

中に大量のもやしと、その他少量の激安のセール品が入っているのは、

麗香の粋な計らいでマイバッグ持参の値引き(5円)を受けることができたという、

心温まる前途があった証拠であり、

さらにそれを自宅まで持って行ってくれる無料宅配サービスまで行ってくれているからだ。


「初めてだから仕方がない。

 でも一歩目は踏み出したじゃねえか」


俺は麗香のマイバッグから突出している、数冊のファッション雑誌を指差す。

聞いて呆れるぜ?

食料品を買い終えて迎えに二階に上がったら、この二人、

いるはずの衣料品コーナーの若者向けの売場にいなかったから、俺は慌てた。

で、探しに探し回ったところ、

紳士服売場でカッターシャツの特売を真剣な眼差しで吟味しているのを

15分かけてやっとこさ見つけ出したってわけさ。

俺は思わず突っ込んじまった。「真夏の就活ですか?」ってな。

まあコイツら二人が真性のバカではなく、

にわか信じ難いと思うが超純粋、

言い換えたら天然記念物なもんだから、仕方がない。



俺はこの二人の珍行動を見た時、

高校が制服でよかったと、この時生まれて初めて思ったね。


私服だったら、そりゃもう、どんな服装で学校に来るか予測がつかない上、

もしかするとそもそも服という概念自体……ゲフンゲフン。

そういうわけだ。

で、俺が呆れ顔で、10代〜20代向けのファッション雑誌をオススメしたと

そういういきさつだ。


どこでそんな金を手に入れたのかは知らんが、これらの雑誌は麗香の自腹だ。


「私、ちゃんと選べるかな……」

バッグから雑誌をスルッと取り出してページをパラパラめくる麗香。

俺を挟んで反対側、零雨はというと、

「…………」

この通り、無表情で何の変化もない。



「さあな。選べるかどうかはお前次第さ。

 心配なら、今度チカに連れていってもらえばいい。

 あいつはダサ子じゃないからまあまあ使える」


「うん……」


麗香は力無さげに頷くと、真剣な表情で雑誌に目を向ける。


「おいおい、暗くなってきてんのにそんな真剣に読んでると、電柱に頭ぶつけっぞ?

 それに最近は柄の悪い連中がこの辺をうろちょろしてるって噂もある」


隣の港区に縄張りを持つ、その筋の方(ヤ●ザ)達が、

チンピラのオマケ付きでこちらに進出してきているらしい。

港区は前から相当治安が悪く、それこそ拳銃だの麻薬だの賭博だのと、

やりたい放題で警察も手がつけられない状態で、

つい最近、やっとこさ構成員の一部摘発に成功したとか。



隣の俺達の住む町はその反対で、

近所に高級住宅街があることからも分かると思うが、結構治安がいい。

隣町の関係にありながら、よく治安が維持できたものだと、

感心しながらも首を捻っていた俺だが、そんな時代も終わりつつあるようだ。


まあさすがに手榴弾の大量密輸が発覚したというニュースを聞いた時は、

いくら治安がいいといっても、不安がらずにはいられなかったが。


俺の勝手な推測では、やつらは高級住宅街を狙っていると踏む。

資金源不足か何かが理由だろう。


「うん……気をつけなくちゃね」


麗香はぱたりと雑誌を閉じ、バッグの中に入れようとしたその時だった。


「あっ!」


バサッ……


後方からバイクの音が聞こえ、俺達のすぐ近くを横切ったと同時に、

麗香が雑誌を落とした。


「危ない運転ね」


麗香は愚痴をいいながらすぐに雑誌を拾い、バッグの中に


「……バッグが、ない」


「は?」


「今、私が持ってたバッグ!」


俺の隣の零雨が袖を引っ張って言う。


「……コウ、バイク。」


はあ、噂をすればなんとやら、バイクの運転手はノーヘルのチンピラ二人組じゃねーか。

生意気にも、20メートル先で停車し、さっきまで麗香が持っていたバッグを掲げ、挑発してくる。


あん中には、雑誌数冊と俺の食料品……やべっ!


「おい、冷静になって聞け。

 ……追い掛けっぞ!」


無駄だと分かっていての悪あがき、もしかしたら転倒してくれるかもしれん。


「うん!」

「…………コクリ」


麗香と零雨は同時に頷いた。

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