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マジで俺を巻き込むな!!  作者: 電式|↵
ハウス・クリーニング
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第2話-9 ハウス・クリーニング ★☆☆

あれから麗香とチカの二人で昼メシを作っていた。

「昼食、できたよ」


チカが汗を拭いながら言う。


今は午後1時半をまわったところだ。

昼メシの時間に間に合ったな。


チカは食器にチャーハンをよそい、

麗香はリビングに集まった俺達に一つ一つ手渡す。


「はい、これは麗香ちゃんの分ね」


チカが皿に盛る。


「え?私の?」


なぜか驚く麗香。

どうしてそこで驚く必要があるのか、俺には理由が分からん。


「当ったり前じゃないの!

 食べないつもりだったの?」


チカは麗香を見て言うと、

首をひねって「分からないなあ」といいたげな顔をして、

また食器にチャーハンを盛る。


「はい、零雨ちゃんの分」


麗香は自分の分と零雨の分を持って、キッチンから出てくる。



「いただきます」


俺が配った割り箸を皆が一斉に割る。


俺の家には、残念ながら5人で使うような大きなテーブルがない。

一人で食べるのに特化したテーブルならあるが。


一人暮らしで寂しい思いをしながら

毎日を送っている俺にとってみれば、そんなアットホームな装備はいらない。

一人暮らしでアットホーム装備をつけたって、

ただ寂しくなるだけで、なんの利益もない。

かえって場所をとるし、どうせテーブルの上がまた散らかるだけさ。


今回は、そういうわけで皆地べたに座っている。



それはさておき、肝心のチャーハンの味なのだが…………

特に言うことはない。うまくもないし、まずくもない。普通。


厳密に評価するなら、チャーハンの中でもむちゃくちゃうまいところと、

残念なところが混ざっている。


簡単にいうと、むちゃくちゃ旨くて★★★(星三つ)の部分と、

残念ながらあまりおいしくない☆☆☆(星なし)の部分とが合わさって、

端数切り捨てで、★☆☆(星一つ)という感覚だ。


ちなみに俺は食通ではない。

しかし、俺の評価は一般論であると確信しているから、

万人に納得してもらえると思っている。

現に、この中で食事中の人間(プロブラムも含め)は誰もうまいとは言っていない。

作った本人もそう思っているらしく、いい顔はしていない。


「それにしても、小一時間掃除しただけなのに、大分綺麗になったね」


チカがしみじみという。


「俺達三人(ジョー、俺、零雨)、けっこう頑張ったぜ!」


ジョーは誇らしげだ。


「中でも、零雨の整頓の速さは凄いぜ?

 もうどこに何があるのか分かってるみたいにテキパキ掃除するんだ。

 もう家の中の半分は片付いてると思う。

 ちょっと残念なのは、コウのベッドの下には何もなかったことだな」


「ジョー、そんなの期待してたの?

 あんた、私だからまだ許せるけれど、

 他の女の子の前でそれ言ったら絶対に引かれるからね!」


チカがジョーを叱った。

これはチカのあふれんばかりの母性本能のしわざか。

で、一応チカの言うところの《他の女の子》である麗香はというと、苦笑。

零雨はいつも通りの鉄仮面。頭をナナメに《?》信号を快調に発信中。

どうやら「ベッドの下」の意味を、理解していないようだ。

だからといって、俺が零雨に解説してやる気はさらさらないんだが。


「でも、これぐらいのペースなら、あと2時間ぐらいで終りそうね」


麗香がさりげなく話題を変え、ジョーを救出。


ジョーは、口にだしては言わないが、麗香に感謝している顔だ。多分。


「そうだな。

掃除が終わったら、用意周到な俺がトランプを持ってきたから、それでゲームだな。」


ジョーが言うが、ジョーが用意周到かは疑問符が浮かぶ。

クラスで一番よく忘れ物をするのはジョーだし。


ああ、そうか。

「楽しいイベントがあるときは」という前提がついてたんだな。悪い悪い。


ジョーが俺をじっと見つめる。


「コウ、今心の中で俺がよく学校で忘れ物をするくせに、こんな時だけ用意周到だな、って悪態ついてたんじゃないのか?」


「よく分かったな。お前にしては上出来だ」


俺はニヤリ。


「……一言多いぞ」


「ところでだ」


俺は聞きたかったことを聞く。


「俺は住所も教えてないのに、何でお前らは俺の住所が分かったんだ?」


チカが答えた。

「金曜日の学校帰り、私達がさよならしたと思わせておいて、

 じつはみんなで協力してこっそり家まで尾行してたのよ。

 だって、コウがあんなに嫌がってたのに、いきなりいいよ、なんて言われたら、

 何か裏があると思うでしょ?

 で、私なりに考えてみたら、

 そういえばコウは住所教えてないってことに気がついたの。

 なるほど、住所が分からなかったらコウの家に行けないもんねー。

 だから、私が声をかけて、コウを尾行することにしたわけ」


俺の作戦、完全にばれてたんだな。

それよりも尾行されてるとは知らなかった。

4人で俺を尾行したならば、

誰か一人は音をだすとか、見つかるとかでしくじると思うのだが、

チームワーク完璧だな。


お前らなら、カーリング、ちょっと練習すれば地区大会で優勝できると思うぜ。

競技人口が少ないから、多分出場者はお前らだけになりそうだ。

戦わずして地区大会優勝……棚からぼたもちだ。



「お見事だな。

 まあ結果的には来てもらって正解だったかな、と思ってる」


チカは胸を張って

「あたしに嘘は通用しないわよ」

と自慢げにいう。



「それにしても」


チカが零雨を眺める。


「零雨ちゃんの髪って本当に綺麗だよね〜

 綺麗なストレートだし、白い髪が雪みたい。

 私やお年寄りの白髪とは違って、しなやかだもん

 いいな〜私、零雨ちゃんがうらやましい」


単純に褒めているのか、嫉妬しているのか、チカの真意は不明。


とりあえず、ここで零雨は何か返事をしなくてはいけないんだが、

ちゃんと理解できているか?



「……ありがとう」


できてたようだな。

しかし、このあと零雨が他人を褒めることに対する期待値は、

どんな計算の間違え方をしたとしてもゼロ。

なぜかって?簡単な話だ。計算の最後に0倍するからさ。



もし褒められたのが麗香なら、そのあとを続けることができるだろう。


ここはひとつ、俺が零雨をフォローする必要がありそうだ。


「チカ、前も言ったがお前はそっちの天然のクルクルの髪型の方が

 ストレートより断然似合ってる。

 確かに手入れは男の俺からも見ても面倒臭そうだけどよ、

 それなりの価値があると思うぜ、俺は。

 それにクルクルはチカの代名詞(トレードマーク)だ。

 商標登録しても何の問題もないほど、似合ってる」


無難なフォローができたな。


「あのね、コウ。

 私はイメチェンしてみたいわけ。イ、メ、チェ、ン。

 クルクルがわたしの代名詞(トレードマーク)っていうのも気に入らないの!

 私、今までに頭の後ろにワカメつけてるみたいになってるって

 言われたことがあるし、寝癖ついてるよって勘違いされたことだってあるの!

 コウが本気で似合ってるって言ってるのかどうか分からないけれど、

 私は1回がらりとイメチェンしてみたいの!」


この話を麗香はうんうん、と首を縦に振りながら聞いている。


それにしても、

チカの後ろ髪を見て《ワカメ》を連想したそいつの想像力と、口に出す度胸はすごいな。

勝手で申し訳ないが、尊敬させてもらおう。



ごちそうさま、と俺が言うのと同時に、チカも言った。

どうやら俺とチカが最後だったようだ。


食器の後片付けは俺がやることになった。

箸は割り箸だからごみ箱に捨てるだけでOK。

俺は皿をただひたすら洗うだけでいいのだ。

幸いにして残した奴はおらず、きれいに完食してくれているおかげで、洗いやすい。

皿に乗せられずにフライパンの上に残ったチャーハンは、

今日の俺の晩飯になりそうだ。


地味にリアルだろ?



俺以外の皆は、俺が皿洗いをしているのを見てか、

食後すぐだというのに掃除をやりはじめた。

一致団結して役割分担している。主導は麗香。


いい友達を持ったもんだな〜、俺も。


そう思いながら皿を洗う。




皿洗いも終わり、ふと俺はチカと麗香が冷蔵庫の食材を

どれくらい消費したのか気になり、冷蔵庫のドアを開ける。



ハハハハハ……冷蔵庫の中の食材がキレイサッパリなくなっている。

見事に空っぽだ。野菜室も、冷凍室もすっからかん。

あるのは氷だけ。


……財布の中には、確か4500円程残ってたから、

今日、明日からの一週間分の食材を買いに行ったとして、使えるのは半分の2250円。

一週間は七日だから、2250円を7で割って、一日分は約321円。

一日に食事は3回だから、さらに3で割って、一食分は約107円。


冷蔵庫の前で、俺は嫌な汗が流れる。






やべえ、もやしを買いに行かねえと。


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