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マジで俺を巻き込むな!!  作者: 電式|↵
ハウス・クリーニング
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第2話-7 ハウス・クリーニング 大型ゴミ置き場

それから俺達は俺の家に戻った。


ただし、麗香だけはちょっと持ってきたいものがある、と言って

家に帰っていったから、今俺の家には零雨、チカ、ジョーがいる訳だ。


「コウ、暑いからエアコンつけようぜ」


荷物運びの仕事を終えたジョーは、シャツをパタパタさせる。


「エアコンが調子悪いんだから、我慢しろ。

 俺だってエアコンつけたいさ」


エアコンは買い物に行く前、俺が突然エアコンを分解しだした零雨の安全確保のために電源を切ってそのままだ。

零雨が室外機の電子基板から電解コンデンサを引きちぎっちまったから、

電源を入れることはすなわち、パンドラの箱を開けることを意味する。


電解コンデンサを交換すれば済む話なのだが、

いかんせんどこで手に入れたらいいのか分からない。


「零雨、例の部品はどこで売ってるか分かるか?」


俺が聞くと零雨は首を横に振った。


「あ〜!こんなに暑いのにエアコン無しはきついわ!

 コウ、扇風機はある?」


チカが欲しがったので、

俺は別の部屋から扇風機を引っ張り出してリビングに置いてやった。

ついでに俺は家のありとあらゆる窓を開けて、部屋の中の通気性を確保。


これで家の中に風が入ってくるようになったが、

元が熱風であるから冷却効果はイマイチだ。

ないよりあった方がいい、そんな感じだな。


「一応涼しくなったし、チカ、約束の昼飯ヨロシク」

俺が言うと、チカはハイハイ、といって

せっせと首を振っている扇風機の前から立ち上がった。


「何作ればいいの?」


俺はこれといって食いたいものがないから、ジョーに聞いてみる。


「ジョー、お前は何が食いたい?」


「思い浮かばねえや」


と、いうことらしいので、チカの自由にさせることにする。


「得意料理でも何でもいいから、好きなように作ってくれ。

 ああ、カップラーメンは無しで。俺の非常食だから」


「そう、それじゃあ冷蔵庫の中のもの、勝手に使わせてもらうわよ」


「ああ、勝手に使ってくれ」


俺はソファに腰を下ろして、テレビリモコンの電源ボタンを押す。


あれ、テレビつかねえ。

あー、そういえばプラグ引っこ抜いたんだったな。


俺はテレビのプラグをコンセントに差し込む。


その時、ジョーが言った。


「コウ、前々から言おうと思ってたんだけどさ、

 家の所々にパンパンのゴミ袋があるじゃん?あれ何?」


「ああ、あれ捨てようと思ってくくってそのままになってるやつか。

 捨てにいかねえとな」


ちっ、サボろうとしてるのがばれたか……


俺は零雨に目を向ける。

ジョーは荷物運びでへたってるから、

ゴミ捨てを手伝ってもらうのは零雨がいいだろう。


「零雨、悪いが今からゴミ捨てに行こうと思うんだが、手伝ってくれねえか?」


零雨はうなずいた。


それから俺と零雨は家の中で宝探しを始めた。

お宝はもちろんゴミ袋。

やるならもっとマシな宝探しがしたい。


零雨は(ゴミ袋を放置した張本人の)俺があっちこっち動き回っているのとは対照的に、

まるで答えを知っているかのように宝を探し当てる。


そのおかげで、ゴミ袋は思ったよりも早く集まったんだが、零雨のミステリー能力に俺はなぜか若干の恐怖を覚えた。



「次は零雨、ゴミをマンション一階のゴミ捨て場に捨てに行くから、

 ゴミ袋を持ってついてきてくれ」


ゴミ袋の数は合わせて7つ。

面倒だから、もう一回で持って行ってしまおう。


俺は袋を4つ、右左均等に持つ。

零雨は残りの3つを持つ。


「俺らちょっとゴミ捨ててくるからな」

ジョーに言い残して俺と零雨は家を出た。



エレベーターに乗り、途中で乗り合わせた家族御一行に嫌な顔をされながら、一階に向かう。

嫌な顔をされる理由は単純明快、両手に持ってる、若干の不健全な芳香を伴うブツだ。



一階に着くと、御一行様は足早に出て行く。

俺と零雨も続いて出て、ゴミ捨て場へ。


ゴミ捨て場には、他の住民が出したゴミが山を成している。

いろんなニオイがREMIX(リミックス)され、

俺達のゴミ袋の不健全な芳香どころではない、強烈な悪臭が鼻につく。

このニオイにはどうしても慣れることができない。


俺は4つ、そのゴミ袋の山のてっぺんめがけて、袋を放る。


「零雨、ゴミ袋」


零雨から受け取ったゴミ袋も、間違いなくてっぺんめがけて投げる。


「零雨、ありがとさん。

 部屋に戻ろう」


俺は言うが、零雨は大型ゴミ置場の方へと歩きだす。


「部屋はそっちじゃないぞ」


俺がそういっても足を止めず、大型ゴミ置場の中に入っていく。


「どうしたんだ、零雨?」


大型ゴミ置き場を入ってすぐのところで立ち止まっている零雨の隣に駆け寄る。

零雨はさらに奥へ進む。


「……これらの物品の……所有者は誰?」


突然零雨が聞いてきた。


「いや、捨てていったものだから、誰が持ってるとかそういうのは……」


俺が解答に困りそういうと、零雨は一台の空気清浄機を引っ張り出してきた。

デザインも新しく、新品同様、まだ使えそうだ。


「あいにく、空気清浄機はもう家にあるんだが」


「……これは空気清浄機として使えない」


零雨は言う。


「……でも」


零雨は空気清浄機を立たせ、近くにあった古くて重そうなオーブンレンジを手に持ち、

高々と持ち上げる。

さすが、俺をカートで吹っ飛ばしただけある。

そして空気清浄機の真上からハンマーのように思いきり叩きつける。


バコン、という音と共に空気清浄機のカバーが割れて外れた。


「……部品としては使える」


零雨が手にしているオーブンレンジも、ガラスにヒビが入ってしまったが、

そんなのはお構いなし。


ポイ、と(ゴミ捨て場の中で)投げすてて、

空気清浄機の電子基板を取り出す。


なるほど、そういうことか。


零雨は、空気清浄機から、エアコンで逝きかけていた電解コンデンサと

同じものをみつけ、ブチッと引きちぎった。


「これはコウのエアコンで……故障しかけていた電解コンデンサと……

 全く同じもの。

 新しい部品だから、交換に……適している」


ははは、零雨が俺のエアコンを分解した時、汎用性の高い部品だと言っていたが、

まさかこんなところにあるとは思わなかった。


「ありがとな。

 しかし残念ながら俺の家にはそれを取り付けるはんだごてがないんだ」


零雨はそれを聞くと、おもむろに携帯電話を取り出した。

零雨の髪と同じ透き通る白色の携帯電話だ。

前に行った麗香の家のテレビと同様、型番もメーカーの名前もない、

ミステリアス携帯である。


零雨は早打ちで携帯の操作をする。

早打ち、俺もできるようになりたい……


零雨は携帯を閉じて元にしまう。

携帯を取り出してからここまでの時間はたったの数秒間であるから、

恐らく早打ちの中でも神の領域に分類されるだろう。


「麗香にはんだごてを……持ってくるようメールした」


「それはご親切にどうも」


俺はちょっと嫌みっぽく聞こえてしまったかなと深く反省をする。


「部屋に戻ろうか」


俺は零雨に呼びかけると、零雨はうなずいた。

やっぱり零雨はうなずくのが癖みたいだな。


俺の左隣りに零雨が並んで歩く。


「ところで」


俺は一つ聞いてみる。


「あんな沢山のゴミの中から、

 どうしてあの空気清浄機に同じ部品が使われてるって分かったんだ?

 分解してひとつひとつ調べたなら納得がいくが、そうじゃなかっただろ?」


零雨は俺の顔をじっとみて答えた。


「……私だから」




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