表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジで俺を巻き込むな!!  作者: 電式|↵
計算式の彼女
23/232

第1話-21 計算式の彼女 世紀末貧乏宝くじ

 ――――ごもっともな回答であった。神子上はそれを聞くとくすりと笑う。



「それでね、次は私があなたと会うことにしたの。今まで会った大学生達とは違って、足立くんから話し掛けてくることもないし、私が話し掛けてもそっけない返事しかしない。すごく戸惑ったけど、とりあえず『気が合いそう』って言ってみたら、意外な反応が見れて面白かった」



 ああ、あんとき予想外の展開だったから、飲もうとしてたお冷やでむせたんだったな。



「それにあまりものを言わないってことは、口が固いんじゃないかなって思ったの」


「んでその時に当選が確定した訳だ」


「だけど非常事態が起きたとき、うっかり秘密を漏らしてしまわないとも限らない。零雨ちゃんからあなたの行動を聞いて、あなたが零雨ちゃんに恐怖を抱いていることは分かってた。だからわざとあなたに見えるように零雨ちゃんが尾行して、恐怖心をあおらせたの」


「それが真理ってわけか……ひでえ話だ。てかここに至るまでのプロセスが長い」


「ちゃんと説明しないと正しく理解してくれないでしょ?」


「まあ確かに」



 確かにこの一説明だけ聞いてもわからんとこばかりで質問しまくってただろう。このように筋道を立てて話してくれた方が理解は早い。一枚取られたな。



「あなたの行動は理想的だった。友達を保護しつつ安全な場所へと逃げる。友達からの追及もうまくかわして、情報を与えることなく無事に家に帰した」



 チカからの追及……別れ際の十字路のことだ。やはり俺達のことを追っていたのか。



「どこから俺達のことを見てたんだ?」


「私は足立くんのすぐ後ろにいたよ。ものすごくキョロキョロしてたね」


「おちょくられてるみたいですげえムカついてきたんだが。それに辺りを見回しても人影は全然なかったぞ」


「私達は本来実体を持たないって言ったよね?」


「…………。」



 つまり“そこに存在はしているが、物理的に存在してない状態である”ということらしい。短絡的に言えば幽霊状態ってことか。


 神子上は改まったように座り直し、言った。



「私たちと友達になってくれる?」


「……紙と筆記用具を持ってきてくれ」



 俺はおもむろに口を開いた。こうなったらこうするしか方法はない。神子上は嵩文に俺が注文したものを取りに行かせた。少しして嵩文が新しい紙を持ってきて、テーブル上のボールペンと一緒に俺の前に差し出した。


「誓約書書いてくれるの?」



 神子上の問いに何も答えず、紙を横長にしてボールペンを縦書きモードで走らせる。俺は完成したそれを丁寧ににたたんで神子上に差し出した。



「もしダメだったときは、これを実家に届けてくれ」



“拝啓 母上様


 あなたがこの手紙を読む頃には、俺のことで心配していると思う。

 端的に言うと、俺はもうここでは暮らせなくなった。

 誰の手にも届かない遠い場所で暮らすしか、生きる道はなくなった。

 俺のことは忘れて、幸せに暮らしてほしい。


 親不孝の愚息より 敬具”



 神子上はその文面を見るとビリビリに引き裂いた。



「行かせないよ」


「ハハハ、やっぱダメか?」



 俺は冗談半分、本気半分の文面だったのだが、どうやら神子上は協力者は俺に決定しているらしく、逃げ道を用意してはくれなかった。



「友達になるだけだから。ね?」


「……俺が何て答えるか、シミュレートなら分かるんじゃないのか?」


「シミュレートしているのは、物体と、原始的生物だけ。高等生物は脳みたいな物理的な《モノ》や、その身体はシミュレートの対象だけど、そのシミュレートから生まれる精神的なものは私たちには分からない」


「つまり、脳味噌に流れる微弱電流とかドーパミンとか、そういうものはシミュレートの対象だが、その微弱電流の意味するもの(=思考)は分からんと?」


「うん、そういうこと」



 なるほど、“気になるあの子の頭の中チェーック! ”みたいなことはできないのか。なんというか、そういうことができるなら、とちょっと期待していた俺は残念としか言いようがなかった。そうだよな、読み取ることが可能なら、幽霊状態で人々の思考や心理を読み取って解析すればプログラムとやらの修理は一発で終わることができる。彼女(?)達がこうやって俺にお願いをする必要はない。



「普通に過ごしてくれるだけでいいから……」


「普通に過ごせと言われても……」


「新しく友達が増えたと思って、お願いっ!」



 嵩文と神子上のお願いはあまりにも不平等なものだ。地上波でよく放送される、一人の男が世界を救う的なハリウッド映画を見ながら、こんなの現実じゃ誰も背負いたくないだろ。世界を背負うとか人生で最もゴメンだね、などと常々考えてきた俺だ。そんな俺に転がり込んできた2人。頭を抱えるのも無理はない。しかし他を当たってくれと言ってまた失踪者が増えるのは後味が悪い。というか、神子上の転入は既に決まっているわけで、断れば気まずい空気が転入初日から流れる。もう適任者はほぼ俺確定じゃねえか。


 俺がどう切り返そうかと腕を組んで思案していると、嵩文が席を立った。なにをするのかと思いきや、そのまま俺に向かってゆっくりと頭を下げた。



「とりあえず三顧の礼の逆バージョン一回目ということで今日は帰っていいか?」



 ここで俺が切り出したカードは官僚御用達の結論の先送り。三顧の礼とは、お願いする人がされる人の家に来て頼み事をする。三回目の訪問で「しょうがなねえな、その願い受けてやろうじゃねえか」という流れになるというもので、古代中国の儀礼の一種だ。受けるのは仕方がないにしても、心の準備というものが――――



「あと二回、今ここでお願いしてもいい?」



 ここで三回お願いして短縮する気か!



「そんなに急ぐほどのことじゃないはずだ。 学校は次の木曜日に転入だろ?」


「零雨ちゃんは私より1日早い水曜日、私の予定と同じクラスに」


「はぁっ? お前も転入すんのかよ!」



 嵩文は小さく頷いた。後出しジャンケンでズルズルと新事実が出るな、おい。しかも今神子上がサラっと俺のクラスに転入してくるとか言ったし。そんな二人のお願いのポーズを見ながら、俺は頭を掻いた。


 どーすっべ、これ。ここ3日連続で他人の用事に振り回されている俺は、頼まれごとに少々ウンザリし始めている面がある。俺は周囲から扱いやすい人間とでも思われてるのか、頼りにされているのか。実際はオール・オア・ナッシングではなく、その2つの要素のバランスで頼まれやすいかどうなのかが決まるとかそういうことなんだろう。いや違う。チカもジョーも口を揃えて「一人暮らしは時間の融通が利く」なんて(確かに一理あるが)当事者からすればとんでもないこと言ってるし、基本的にはその誤解が俺の頼まれやすさになるのかもしれない。



「仕方ねえな……俺は面倒見はいいどころか超ぞんざいで、この通り性根がすでにこの歳で腐ってる。ハズレ引いたって懺悔しても知らんぞ」



 さすがに「お互い貧乏くじ引いちまったな」とは言えなかった。神子上も嵩文も「普通に接してくれ」ということだし、話を聞けば世間表向きには普通の女子高生を演じるつもりらしい。二人の脱輪した考え方(物理計算式とか、マクロすぎる感性とか)は手直しが必要だろうが、その辺は適当に放っておけば自然と考え方が馴染んでくるだろう。それに誰がこんなうまいことを言い出したのか、「コンピュータ ソフトがなければ ただの箱」という川柳っぽい言葉もある。同じように特別な力を持っていたとしても、それを使わなければただのキャッキャ騒ぐ女子と何ら変わらない。つまり俺が口を滑らせさえしなければ、俺に害はないのである。



「零雨ちゃん、やっと見つかったよ!」


「…………。」



 満開の桜のような笑顔を広げる神子上と対照的に、顔の部品のうち動いたのは最低限唇とまぶただけの嵩文。この様子を見るだけで感情がないらしい嵩文が人間らしい生活をできるのか、いささか不安になってきた。不可抗力的に何かの拍子にバレたら、俺まで責任が回ってくるのだろうか。とにかく最大の懸念は嵩文である。無表情な嵩文が他人からその点を指摘されるのは確実だ。そういうことまで考えると確かに簡単だが非常に難しいお願いだ。



「足立くん」


「なんだ?」



 とりあえず気楽に、と楽観視することを決めた俺に神子上は手を差し出した。



「握手」


「なにゆえ」


「決まってるじゃない。友達になった握手」



 差し出された手を握り返す。神子上は俺の手をぎゅっと握って少々激しめのシェイク。神子上の喜びようは半端じゃなかった。



「ほら、零雨ちゃんも握手」



 神子上に手を引かれて席を立った嵩文。俺の前に来ると同じように手を差し出した。俺は同じように握り返したが、嵩文の握力は握手の際に手が外れないよう最低限の摩擦力を保持する程度だったので、こちらが少々強めに手を握ることになった。握手もどことなくぎこちなく、俺の手首の関節の潤滑性を守るための準備体操のようだった。握手が終わると神子上は嵩文にヒソヒソと何かを指示する。それを聞いた嵩文はまたリビングを出ていった。さっきからまるで使いパシリのような扱いである。



「神子上、嵩文って一応お前の先輩なんだよな?」


「うん、まあね。でも、零雨ちゃんは古いから。最新の私が主導することに決まってるの。私は|Primary Systemプライマリシステムなの」


「プライム……何だって?」


「『プライマリ』。最重要のシステムっていうことだよ。零雨ちゃんは|Secondary Systemセカンダリシステム。二番目のシステム」



 ……テストに出なさそうだから忘れておこう。変なことを頭に叩きこんで大学受験とかで必要な記憶領域が減っちまったり、訳分からなくなって混乱したりすると大変だ。



「足立くん。私達、友達になったでしょ? 呼ぶときは愛称とか下の名前で呼ぼうよ」


「構わんが、強制はするなよ。俺はコウでいい」



 神子上はマクロ、嵩文はシロというのが呼びやすそうだ。シロは典型的な犬の名前の一つだが、神子上のパシリにされているところを見ると、そっちの方がしっくりくるというのも頷ける。



「ねえコウくん……なんか失礼なこと考えてない?」



 俺の考えを読まれたかのような神子上の質問に、俺はヒヤリ。大丈夫だ、いくら神子上でも俺の頭の中は読み取れない。読み取れるなら彼女はここにはいない。



「……いや?」


「そう、ならいいんだけど。私は麗香って下の名前で読んでくれればいいから。嵩文さんは零雨って」


「理解した」




 微笑む神子上――麗香の後ろに、背後霊がいた。嵩文こと、零雨だった。お前いつの間に瞬間移動したんだよ! 零雨にはまったく存在感が感じられず、いつ麗香の後ろに立ったのか。移動する姿が視界に入っていたはずだが、俺は認識できていなかった。零雨の右手には純白の紙袋があった。



「これ、持って帰って!」



 麗香は零雨から紙袋を受け取って、それを差し出した。



「ん? 何だこれ?」



 神子上が渡してきた紙袋を受け取り、中を覗いてみる。どうやらお菓子のようだ。なるほど、こういうのはよくあるパターンだな。お付き合いを続けるという意思表示をする常套手段、とも言えるか。……一部の例を除いては。これがお菓子じゃなくて札束なら、俺の顔もいやらしいぐらいにニヤけて歓迎するんだがな。



「お菓子か。どうも」


「私のオリジナルだよ。人間の味覚の嗜好データからはじき出した、お菓子として最もうまいと感じられる味に合成したの」



 ……出来れば、私のオリジナル、というところで止めてほしかった。合成って……食って大丈夫なのか? 合成って、なんかこう、化学式書いてフラスコとかビーカーとかを駆使して作り上げたみたいなイメージが。合成失敗で中で劇薬が出来上がってて、食った瞬間にコロリ、は絶対に嫌だ。



「味見は、したのか?」


「ううん、してないよ」



 ……俺を殺す気じゃないだろうな? 神子上は俺の若干戸惑う顔を察したらしい。



「やだなあ、多分食べても害はないって!」



 おいコラ多分って何だよ、多分って! 家に持ち帰って、食べたらあの世行き〜のくだりはどこかで聞いたことが。あ、あれだ。ゴ●ブリ駆除のCM。俺は下手をすると、ゴ●ブリと同じ死に方をするのか。だがここで毒味してみろとは言えず。俺はそのまま受け取ることにした。食うか食わないかは俺の自由だしな。



「受け取っておく。ありがとな」


「結構長いことおしゃべりしたから、喉乾いたでしょ? ちょっとお茶入れるね」



 麗香は俺の回答を待たず、ルンルンスキップ気分で台所に向かった。俺の座る席からは台所の様子は見えない。冷蔵庫を開ける音がした。この部屋のクーラーがついていないせいで、俺は汗だくだった。少しして、麗香がガラスのコップに入ったお茶を俺の前に差し出した。



「ありがたい」



 氷こそ入ってなかったものの、冷蔵されていたお茶は体を冷やすには十分だった。



「そのお茶も合成したんだよ」


「ブゴフッ!」



 麗香の不必要な一言で、俺は飲もうとしていたお茶をまたしてもコップに吹き返してしまった。ここ二週間の飲み物を吹き返す頻度は異常だ。しかもいずれも同一人物の発言が原因なんだからたまったものじゃない。俺が吹き返した反動でコップ内のお茶が俺の顔面に逆噴射。顔がお茶まみれになった。



「変なこと言うなよ……」



 ハンカチで自分の顔を拭きながら麗香に言った。



「でも、飲んでも大丈夫だったでしょ?」


「とりあえず速効性の毒は入ってないようだ」



 ハンカチを四つ折りにしてポケットにしまった。要は俺のイスの足元に置いている紙袋に入っているお菓子は安全なものだと言いたいのだろう。だが茶の合成に成功してても、お菓子の合成が成功しているとは限らない。世界を管理するプログラムがそんな凡ミスをする――そういう視点から見れば考えにくいか。



「ところで、どうやってフランスの国営放送を画面に映したんだ?」



 俺は素朴な疑問を麗香にぶつけた。麗香は簡単なことだよ、とその方法の説明を始めた。



「電波を発信するのは、高いところからのほうが有利なの。家の照明が天井にあるのと同じで、高い方がより遠くに、隅々まで届くの。フランスにはエッフェル塔があるでしょ? つまりあれは観光名所でもあると同時に、電波塔でもあるの」


「そうなのか。知らなかった」



 それであのとき麗香は零雨にエッフェル塔の場所を求めたのか。ということは、東京タワーとかスカイツリーとかも電波塔としても使われるということだろうか。おそらく使われるんだろう。



「それでも電波は日本まで届かない。だからエッフェル塔の場所を特定して、その放送電波が伝わる空間の一部を、私の家までショートカットで接続するの。ワープみたいな感じね。そうすると家のアンテナはフランスの放送電波をキャッチできる」


「よくそんなSFまがいの大胆なことを一瞬で思いついたな」



 ワープというか、青狸の例のドアみたいなもののようだ。



「それで受信できるようになるんだけど、それだとフランスの電波がこの地域に広がっちゃう。総合通信局も零雨ちゃんの一件で目を光らせているはず」


「あのジャミングはお前のせいだったのか!」



 コクリと首肯してあっさりと認めた零雨。携帯電話が繋がらなくなり、テレビまで映らなくなった犯人がすぐそこにいるという、衝撃の事実。確かTVのニュースじゃ“電波法違反の立件も視野に捜査を進める”とか言ってた気がする。



「その話はまたあとでね。それで、電波が漏れないように電磁シールドを張って磁気的に密閉したら完成。あとはテレビで映すだけ。あ、このテレビは特別だから映るの」


「なるほど。それで、零雨はなぜ電波をぶっぱなしたのか、言い訳を聞かせてくれ」



 麗香の説明はもうどうでも良くなっていた。それより気になるのは零雨がジャミング電波を出したその理由だ。一体どういう理由があればジャミングをするという決断に至るのだろうか。零雨はワンテンポ遅れて口を開いた。



「……施設から脱出するため」


「どこから?」


「……加治第3火力発電所」



 なんか、零雨はあのジャミング後の停電にも関わっているようだ。根本的に、なぜ火力発電所にお前さんがいたのかという問題まで湧いてくる。……ダメだ、もっともな理由が俺には予想できない。思考のアウト・オブ・レンジ(圏外)である。



「……私はこの地域の沿岸部より……2〜300メートル離れた海上に……この身体を伴って……人目に触れず……出現するはずだった」


「もうちょいスムースに話してくれんか?」


「……無理。現段階では……私の処理が追いつかない」



 とりあえず本人から“仕様だ”と類する言葉を頂いたので、これは仕方がないものとして受け流すことにした。聞いてる方からすれば違和感が凄まじいが。その黙ってる時間を“えー、”と言い換えてくれれば違和感は縮小する。


「えー、私はこの地域の沿岸部より、えー、数百メートル離れた海上に、えー、この身体を伴って、えー、人目に触れず、えー、出現するはずだった」


 …………合ってるはずなんだが、何だこの奇妙な違和感は。とりあえず話を進めよう。



「分かった。なら仕方ない。それで?」


「……しかし、私の持つ地形情報は……古かった。……臨海部が埋め立てによって……拡張される以前の……情報だった。……その結果、私は埋立地に建設された……加治第3火力発電所内に……現れることとなった」


「つまり場所は合ってたが、環境が変わっていたと?」


「……そう。…………私は排煙脱硫施設に……いた」


「排煙脱硫施設?」


「……火力発電の排気から……硫黄分を取り除く施設。……公害予防」



 昔、四大公害病の一つのぜんそくの公害は工場から出る排気の硫黄分だったとか授業で言ってたような。最近日本で公害が聞かれないのはこういう所で皆きちんと対策しているからだろう。



「……その施設には私の他に……複数の作業員がいた。……私はまだ同調(シンクロ)できていなかった。……見つからないよう……移動するのは困難だった」


「シンクロできないってどういう意味だよ」


「……意思のままに身体を動かせるよう……最適化すること。…………見つからぬよう脱出するには……この施設を無効化……かつ通信障害を誘発させ……指揮系統を混乱させて……時間を稼ぐしかなかった」


「それでジャミングしたのか」



 零雨はゆっくりとうなづいた。つまり彼女一人の時間稼ぎのために、この街に住む何十万という人が不便を被ったというわけだ。俺は頭を抱えてテーブルに突っ伏した。やれやれだ。そこに神子上が割り込んでくる。



「私もびっくりしたよ。海の上だと思ったら、製油所の送油管に片足突っ込んで埋まってるんだもん」


「まさか、あの製油所火災はお前の仕業だとか言わないよな?」


「……ごめんなさい。だってそこから抜け出すには送油パイプごと内側から吹き飛ばすしかなかったから」


「つまりその、あの火災はお前の片足が突っ込んだ跡だったと?」


「うん……そういうこと」



 あの火災で体調不良を訴えて、救急車で病院に搬送された人がいるってのに……作業員なんか大怪我したそうじゃないか。この二人は非常に悩ましい。俺と出会う前からトラブル起こしまくってるじゃねえか。これから先トラブルフリーで物事をうまく進めて行けるのだろうか、話を聞いてさらに不安になる。だがこれだけは言える。俺は買ってもいない世紀末貧乏宝くじの1等に当たったと。



「……とりあえずお前ら、今から警察行って出頭してこい」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ