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マジで俺を巻き込むな!!  作者: 電式|↵
キカイノツバサ ―不可侵の怪物― PartB
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第5話-B12 キカイノツバサ 7の変換公式


 “彼と近い者も一緒に来い”


 遠回しで冗長に書かれている王命を手短かつ可逆的に圧縮すると、つまりそういうことだった。リンは突然の宣告に状況を飲み込めていないようだった。クロスの端を持っていた両手を思わずといった感じで離し、口元を覆った。


「本当に冗談、ですよね?」


「総合的に考えて、該当者に一番近いのはお前しかいない」


「王命……何で、何で私なんですか!?」


「いや、そこまでは分からん」



 王命を出した理由の予想ならある程度出来るが、俺は王様本人でもなければ双子の片割れでもない。

 リンがこんな風に驚くのは初めて見るような気がする。両手で口を塞いであちこちキョロキョロする姿は、どこから見ても完璧な挙動不審で目立ちまくりである。

 王命の理由うんぬんより、まずは先に状況を飲み込んでもらわねば。正直、リンがこんな驚き方をするとは思っていなかった。



「あっ、アダチ様!」



 白帽子集団の中で一人赤帽子を被るぐらいのリンの目立ちように、とうとう、というか必然的に俺達はロイドの目に留まってしまった。

 ロイドは眉を下げた顔で俺達に近寄って、ため息ひとつ口を開く。



「後片付けは私たちの仕事ですから、アダチ様がなさる必要は一切ないのですよ」


「しちゃ悪いのか?」



 俺が越権行為か何かにあたるようなことをしているのだろうか。それともただの善意的な気持ちで言っているのか。ロイドは困った顔。



「そういうわけではありませんが、アダチ様もお疲れでしょう。今日はゆっくりお休みになって――」


「固いこと言うなよ」


「しかし」


「それに、俺が手伝いしてたら皆もやる気上がるだろ。さっさとやること終わらせて切り上げようぜ」


「……まったく、あなたのような方は初めてです」



 ロイドは降参するような口調で笑って手を差し出した。彼は俺たちの手伝いを手伝ってくれるらしい。なんだそれ。



「それでは、アダチ様とリン様はこちらのテーブルの端をお願いします」


「いきますよ、せーの、いち、にの、フンム!」



 ロイドは見た目に反して意外と力持ちであった。元窓際族の使いパシリだと聞かされていたから、さぞ俺と同じタイプの人だと思っていた。実際は細マッチョだ。

 ちょっとイメージにそぐわない気がするが、ロイドの趣味は筋トレだったりするのかもしれない。



「アダチ様、お体は大丈夫ですか?」


「明日になってみないと分からんな」


「ちょっとコウさん、ジジくさいです」


「突っ込めるぐらいには落ち着いたようだな」



 頼まれごと、やっかい事、やらにゃならんこと。そんなものが目の前にポンと置かれた時、俺は決まって「面倒」と切り捨てて極力避ける人間だ。

 だが今晩は少し時間がある。そんな今の俺がやっていること、手伝い。まるで真逆じゃねえか。

 元々は、残飯を漁りに来ただけの残念な人と思われたくないという所がこの行動の原点。ところがロイドが割り込んできたことを利用してそのままここから去れたものを、わざわざ最後まで付き合ってやるぜなどと明言してしまった。

 こんな状態の俺を一言で突っ込むなら。そう、ツンデレである。



 十中八九、多忙すぎた説明会にちょっとしたランナーズ・ハイ的な現象を体験し、脳内麻薬に思考が汚染されているのが原因でこんなことを口走ってしまったのだろうと結論。

 後付けの理由に納得。多分これからは自分から疲れるようなことはあまりしない。次のテーブルに手をかける。


 気が別の方向へ行ってしまったせいで、空腹を我慢していた腹がリンとロイドがいる目の前でこれでもかというほどに荒々しく鳴った。

 恥ずかしさ紛れに目を誰もいない方向へ。今の音を二人とも聞いてないわけがない。絶対聞こえたはず。

 一瞬だけ二人の様子を見る。フツーに注目されてる。バッチリ聞こえたその顔は、一瞬見るだけでもよく分かった。



「説明会、ちょっと忙しくてな。正直あんま食えんかった」



 こういう時は包み隠さず言うのが一番である。ただしシリアスな状況における屁は除く。あれだけは素知らぬ顔をしておいたほうがいい。



「それは少し困りました。料理長とさっきお話ししたんですが、もう食材は全て出払って空っぽだということです。日が暮れて時間も経っていますから店も開いていないでしょう」


「仕方ない」


「焼き菓子ならあると思いますので、今日はそれで我慢願います」


「もしやコウさんがここに来てた本当の理由は、実はお腹が空いて――」


「んなわけあるかっ!」



 リンが言い切らぬうちに思いっきり否定した。俺も分かりやすいヤツである。そんな必死に否定したら図星だとバレるだろ。

 一瞬間をおいて、リンが笑った。笑われた。ロイドは聞いていないような様子だったが、リンの笑顔につられるようにして一瞬だけ表情がピクついた。それを取り繕うかのように鼻をすすってごまかしたのは、彼も笑っている証拠だった。



「そうだったんですかぁ……フフッ、コウさんかわいい」



 ぬおおお――! 恥ずかしさで地面を転がって身悶えしそうだ。転がってそのまま自室まで逃げ帰りたい気分であった。






 2日後の昼。早速、というか俺としてはもう、という表現が正しいのだが、飛行機開発計画についての第1回目のミーティングが、迎賓館の会議室で始まった。

 というのも、教会関係者が「開発を始める前に至急どうしても物申したいことがある」との手紙をこちらに寄越したからだ。あまりに急な申し出だった。

 そのため必要な人が集まらず、集まったのはイーカ教会の関係者と政務院の代表代理だけだった。来れなかった人についてはどうしようか。後で書面で内容を送るか。



 暖かく優しい日差しが窓から入り込む会議室。俺の座る席の背後にはグレアが立っている。

 説明会に出たがらなかったグレアがなぜここに立っていられるのか、簡単に説明するとこうだ。

 説明会の後片付けを終えたあと、俺は一旦部屋に戻った。そこで正装から私服に着替える最中、内ポケットに入れていた説明会の招待者名簿を執務机に放り投げたのだが、それをグレアが発見。


「こういう名簿があるなら事前に見せろ」


 名簿を流し読みして一言(要約)。名簿の中に、"グレアのこと良く思ってない連中"はいなかったそうだ。計画参加者の中に積極的に避けるべき人物がいないので、グレアは安心して俺の後ろに立っていられるのである。


 そしてベルゲンの時のようにドジれば、容赦なく椅子に蹴りが入るんだろう。うう怖い。人が座っているイスを蹴り飛ばすなど、メイドの皮を被ったヤクザがやる所業である。


 俺の隣には赤服のロイドと、同じく赤服の部下の男が一名座っている。二人は議論した内容を記録する係らしい。「もっぱら記録は彼に任せるので、私は座っているだけです」とロイドは笑っていたが、何から何まで忙しい男であることには変わりない。ご苦労。


 会議室の扉が閉じ、長テーブルに全員が着席すると教会関係者Aがすぐに口を開いた。それ以前に、あの教会関係者Aって説明会にいたか。説明会で必死に覚えたつもりの名前と顔も、三歩で忘れる鳥アタマ。ほとんどが見事蒸発済みである。



「今回アダチ様が計画された飛行機についてでございますが、飛行機の開発には宗教上の懸念がございます」



 物申したいという手紙の文面からして、俺にとってはあまり良くない内容なんだろうとは察しがついていた。やっぱりか。気分が階段から一段転げ落ちた。



「懸念する訳を聞かせてくれ」


「えー、アダチ様はこの世界における創世神話についてはご存知ですか」


「少し聞きかじったぐらいだ」


「では、要点だけをまとめた簡素なものではありますがご説明いたします」




 遥か昔、何も存在しない宇宙に一つの光の点が生まれた。その光の点は次第に大きくなり、やがてある程度の大きさで成長は止まった。それが神だった。光は突然弾けて、宇宙の四方に散らばった。散らばった光が創りだしたもの――澄んだ空と大地、太陽、生き物、人間、ありとあらゆるもの。夜の星空は散らばった光そのものだという。


 突然ポンと現れた人々は、本能的にとにかく生き残るために食べられそうなものを探し始めたが、それは困難を極めた。言語も文字も存在しないからだ。毒のある植物を口にして死んだ仲間を目にしても、それを伝える手段がない。その植物はダメだと分かっていても、別の所で二の舞、三の舞を繰り返して一向に知識を共有できない。

 かろうじて伝えられるのは感情だけで、そんな状況で人間は飢えで少しづつ減っていき、すぐに消滅の危機を迎えた。


 そこに創造主である神の使い、つまり信仰の対象になっている神使が舞い降りて来て、その不思議な力で人々に言語を与えたという。

 それからしばらく、人間と神使の共同生活が始まった。分からないことは神使に聞けば余すところなく教えてくれたらしいが、神使は寡黙な性格であまり喋らなかったという。

 疑問を片手に神使の元へ行けば、聞かずとも神使の回答、というより概念が頭の中に流れ込んできた。


 人間に対して与えた知恵は膨大で、話す言語から食べられるものと食べられぬもの、果ては建物の作り方や道具の知識、使い方までも与えられた。古文書には、それらの知識に関して神使は「頭の中に神から与えられた膨大な量の、無限を思わせるような書物を持っている。そこから引き出せるものを出しているに過ぎない」と発言したと記述されている。


 神使の存在によって、はじめ丸裸だった人々の生活水準は、日を追うごとに急速に上がっていった。数日もすれば新しい概念や道具が広まり、人口も爆発的に増えた。統治国家もできた。人々は短期間で神使の知恵と力を中心にした文明社会を創り上げたのだった。


 神使はありとあらゆるものを教えたが、すべてを教えたわけではなかった。ある日神使が人を集め、「自分で考える」ことを改めて教えたのを最後に、神殿に篭ると突然宣言した。

 最後に叶えて欲しい願いはあるかと神使が問うと、人間は3日間の考える猶予を求めた。


 3日後、人々は知識ではどうにもできない3つのことを神使に願うことにした。大空を自由に飛ぶこと、神使の持つ不思議な力を少しだけ分け与えてもらうこと、神使がこれからも人々の生活を見守ること。

 神使はそれらを文句ひとつも言わずに了承したという。



 "生まれたものにはものには必ず死がある。今の私は秩序を守る存在。しかしその役目を果たせぬ時がいつか必ずやってくる。その備えを怠ってはいけない。秩序の崩壊は許されない。決して選択を誤ってはいけない"



 数日かけてそれらの願いを叶えた後、神使はこの言葉を最後に、神殿へ消えていったという。



 神使は広げた世界の行く末を見守るために、ラグルスツールにある神殿に今も尚存在していると言われ、神殿の掃除にあたる人の目撃証言もたまに出てくるらしい。

 らしいというのは、「視界の隅に一瞬神使が見えたような気がした」とか、「掃除している背後を誰かが通り抜けたように感じたが、振り返っても誰もいなかった」とかそんな感じでしかなく、確たる証拠はないという。



「この話の詳細について語りだすと時間がかかるのでものすごく簡単に要約させて頂きました」



 教会関係者Aはそう言って話を閉じた。

 リンが話してくれた内容と若干話が違う気がするが、それは物語が口伝(くでん)して伝わってきた過程で変質したと考えればそれほどおかしくない。

 当時の俺は神話より神使そのものに興味があったし、話自体の興味もあまりなかった。覚え違いもあるかもしれない。



「それで、その話のどこに問題があるんだ?」



 要約してくれたとはいえ、話が長いことには変わりなかった。神話の流れは掴めた。あとはその神話が飛行機計画にどのような影響を与えるかである。



「神話の中では最初、人は空を飛ぶことができません。神話では、空は翼を持つ者が闊歩できる聖域として描かれ、知識で空を飛ぶことはできないと明記されています」


「言うなれば、『飛行機は神話を否定するものである』と?」


「左様でございます」



 開口一番の議題がこれかー。重すぎ。宗教となるとこの問題は疎かにできない。花屋をやっていたこともあって、人々の信仰意識の高さはよく知っている。しかも、神話では翼を持たない俺は空を闊歩する権利などないらしい。

 自分たちが信じている宗教の神話を否定されたとなれば、どのようなことになるか――ただ単に飛行機に協力してくれないだけじゃ済まない。きっと猛攻撃を受けるだろう。



「それゆえ私達は飛行機開発以外の手段を選ぶことを提案いたします。現在これといった代替案が出てこないので提案出来ませんが、時間をかければより良い案が出てくるかと」



 飛行機以外の代替案といえば、力技で開拓しながら進んでいく方法が出たが、それを実行するだけの力はあるのだろうか。国家事業的な予算と労力が必要になるのは予想済みである。

 飛行機という乗り物を作ると考えた時、素人脳でも浮かんできた技術的な問題点をどう克服するのか。それも何とかしないと飛行機は実現できない。



「国政的な観点からの意見ですが」



 政務院の代表代理が立ち上がった。オールバックメガネの男は、持ち込んできた用紙をめくる。



「国力と国民の生活水準向上の一貫として、工業の技術水準向上が推進されています。飛行機には未知の技術が幾つか含まれていることは説明会で明らかです。これらの技術を研究することは、国の政策とも合致します。異界の進んだ技術はそう滅多に手に入るものではないでしょう。政務院はこの計画に賛成することをすでに同意しています」



 政務院のこの反応は意外だった。教会側がノーと言えば政務院も引き下がるだろうと思っていた。教会の権力は、現代世界ほどには大きくないようだ。神話や組織の力関係の差。やはり文化や考え方の違いか。政務院代表が俺に目を向けた。



「――アダチ様はどのようにお考えでしょうか」


「計画の目的はあくまで神都まで無事に移動することで、飛行機案はその手段に過ぎない。現実的な代替案があり、それに皆が納得してくれればそちらでも構わないと思っている」



 これに関しては特に言うことはない。



「両者の意見を聞いて簡潔にまとめると、教会側は『飛行機は神話を否定するものであり、なおかつ翼を持たない俺に空を飛ぶ権利などないから反対』、対して政務院側は『技術が欲しいから賛成』ということで認識したが、それでいいか?」


「あんた、ズバッと言うのね」



 後ろのグレアが小声でつっこんだ。元来こういうひねくれた性格なのでね。

 オールバックの男が頭を下げた。



「気分を害されたのならお詫び申し上げます」


「自己中的な言い方をすれば、まあ思惑なんて俺にとっちゃどうでもいい。さっきも言った通り、神都にたどり着くことが本来の目的。それさえ達成できればいい」



 恐らく教会は飛行機反対の姿勢を崩さないだろう。信仰で成り立つ組織が神話を否定することは、自分で自分を否定するようなものだ。そんなことは出来るはずがない。


「少し話題から逸れるが、政務院の方に一つ聞きたい。ここから神都までは、通常どのような方法で移動する? 大まかな流れでいい。教えてほしい」


「基本的に、ナクルから神都へ間にある街を経由して進んでいきます。街で消耗品や物資を補給しつつ神都へ向かいます。野宿の必要も場所によってはありますが、安全を考え出来る限り野宿は少なくなるように計画を立てます」



 おお、思ったより詳しく解説してくれた。なるほど、一直線に野宿オンリーで進んでいくわけじゃないんだな。長旅となれば補給や休息もあって当然だろう。



「それで、移動にはどれぐらいの日数がかかる?」


「だいたい平均一月半強です」



 飛んで一月半か、噂に聞いた通り遠いな。それとも安全のためにこまめに休憩をとるからそれだけの日数がかかるのだろうか。



「つまりだいたい45日から50日で神都に到着するわけだな。なるほどありがとう」


「え?」



 なぜかその場の空気が固まった。一瞬で周囲の人間の視線が俺に集まる。



「……え?」



 俺、なんかミスったこと言った? 俺を見つめるみなの口が半開きオープンになっている。オールバックの男は苦笑いして出された茶に口をつけた。



「え、だから50日ぐらいで着くんだろ?」


「ゴフッ!」



 男は茶を吹き返し、ロイドの部下が驚きのあまりだろうか、よく分からんが羽ペンを落とした。グレアが俺の座るイスの足を折りそうな勢いで蹴った。意味が分からん。

 オールバックの男は吹き返した茶を拭って小さく言った。



「あの、到着までは100日ほどかかります」


「それ計算違くね?」



 男は力が抜けて机に額を剛速で打ち付けた。なに、何このコント。一月はだいたい30日だから半月はその半分で15日。足して一月半は45日になる。計算はは間違っていない。それとも三ヶ月の聞き間違いだったか?



「あのような立派な説明をされる方なのに、まさか月日の計算が――」



 ひそひそ声で部下と話していた教会関係者がそっと口を開いた。



「えーアダチ様。つかぬ事をお聞きしますが、ひと月は何日でございましょうか」


「だいたい30日ぐらいだ」


「一年は何ヶ月でしょうか?」


「12ヶ月……って、ああ」



 分かった。ここは地球じゃない。ここでも一日は24時間で、一秒の表す時間の単位が同じだということで、勝手に一年は365日だと決め付けていた。

 一日の長さはその星の自転速度で決まるが、一年はその星の公転速度で決まる。この星では大地が一回転するのに必要な時間がちょうど地球と同じだっただけで、太陽(正確には恒星)の周りを一周するのに必要な時間は地球と異なるのだ、多分。



「グレア、ひと月は何日だ?」



 皆揃ってひそひそ話を始めたので、俺もこのちょっとしたブームに乗ってひそひそ声でグレアに質問。



「だいたい67日」


「一年は?」


「38ヶ月」


「長いな」



 思った以上にロングラン! ちょっと計算してみよう。持参したメモ紙の端に筆算を描いて計算。あー、一月当たりが67日で、それが38ヶ月だから掛け算して――



「一年は2546日なのか?」


「正確には2550日。もしかして、あんたのもといた世界の一年ってたったの360日しかないの?」


「そうだ。正確には365日だ」



 2550を365で割ると、答えは約6.986。この値が意味するのは、地球の暦での約7年が、この世界の暦での1年になるということだ。

 つまり地球の暦で17になった俺は、この世界での年齢に換算するには7で割ればいい。17÷7はおよそ2.42。



「俺は、この世界の年齢に換算すると、驚愕の2歳と16ヶ月……!」



 おいおい、どんなませたベイビーだよ。無駄口悪口皮肉連発のベイビー。かわいくねー!


 逆にグレア達の年齢は7をかければ出てくる。15×7は105歳。年金暮らしで「ご長寿の秘訣は?」と聞かれてもおかしくない年齢だ。そんな105歳で少女だと……くそっ、こいつ魔女だ!



「ちなみにグレア、まさかと思うが人間の寿命は?」


「平均170年」



 どんだけ生きるつもりなんだ。170に7を掛けると、1190。平均寿命が地球換算で約1200年もあるって、お前達は伝説の生き物にでもなるのか? 俺の記憶が正しければ、1200年前の日本はまだ平安京の時代だったはず。


 地球の人々は頑張って生きてもせいぜい120年が限界である。それでも1200年の10分の1。


 俺達人類は、この世界の人類と比べて寿命が極端に短いようだ。ハツカネズミの気持ちが分かった気がする。

 地球とこの星と一年が違うことが意図せず判明し、室内はどよめきの嵐。そんな中、後ろから肩を叩かれた。振り返ると、口端を吊り上げてニヤつくグレア。



「ねえあんた、2歳児にしちゃ老けすぎじゃない?」


「うるせー、100歳越えのババアが言うな」


「誰がババアよ、誰が!」



 ……してやったり。

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