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マジで俺を巻き込むな!!  作者: 電式|↵
Lost-311- PartA
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第5話-A30 Lost-311- Over flow

今まではコウからの視点で話が進んできましたが、

今回はシステム(神子上麗香)視点でお送りします!

コウくんは私達の手の届かない遠い場所に転送されてしまった。

私と零雨ちゃんは、彼をどうここに引き戻すか、

彼がいなくなった直後からその方法を模索していたの。

でも、どこへ行ってしまったのかさえ分からない彼を見つけだす方法なんて、

そう簡単には見つからなかった。

広大な宇宙空間に浮かぶ一つの小さな塵を捜し出すようなものだから。


零雨ちゃんの意見は理屈で考えれば至極真っ当なもの。


“彼のことは諦め、代理の人間を選定する”


もちろん私は気が乗らなかった。

私が感情モジュール(機能)を切れば、

きっと私も同じ結論を出していたと思うし、

それが一番リスクが低いことも分かってる。

だから、私はコウくんを裏切るのは悪いと思いながら、

代理の人間を見つける作業に入ったの。

最初は、チカちゃん。

でも、チカちゃんは私達の“誰にも言わないで”という約束を守れなかった。

友達に話してしまったの。

彼女には荷が重過ぎたみたい。


そこで私達は時間を打ち明ける前まで巻き戻して、ジョーくんにお願いしたの。

確かに彼は約束を守ってくれてはいたけど、

秘密を打ち明けてから、

明らかに私達を敬遠するようになっていって――私達はバラバラになった。

私達の不注意でコウくんという人間が

一人消えてしまったことが彼にとってとてつもなく恐怖だったみたい。

それに、口には出してなかったけど……怒ってた。


チカちゃんのお兄さんの匠先輩は、そもそも話を信じてくれなかった。

それからは、見ず知らずの人に手当たり次第にお願いしてみたけれど、

私達が期待するような人は見つからなかった。

代理の人間を探す作業は暗礁に乗り上げてしまったの。

確かに、約束もきっちり守ってくれて、

私達の本来の目的が達成できそうな人はいたけれど、

私の心の奥底では新しい人に対する激しい拒絶反応があって、

結局はうまくいかなかった。


頼みに頼んで2836人にお願いをしたけれど、みんなダメだったの。

違う、みんながダメだったんじゃない。

それはただ単にコウくん以外の人間はイヤ、という私のわがままが原因だったから。


……誰からの干渉も受けたくなかった。

自分の家に閉じこもって、

やりきれない気持ちをどう処理していいのか分からなくて――


シミュレートはコウくんがいなくなった時間で止めたまま。

その空間にいることが苦しくなってきて、

三時間時間を先送りにして止めてみたけれど、

今度は同じ日付でいることに辛くなって……一日時間を進めた。

でも今度はコウくんがいたこの世界にいることすら嫌になって、

私はステージ0に逃げた。


コウくんは前に夢ってどんなものなのか教えてくれた。

すべてが幻で、空想で、どんなに辛い夢でも、

目が覚めればそこにあるのは変わりない日常。

そして夢物語はいつしか記憶の彼方へ蒸発して消えちゃう。


私はこれがただの悪夢だと信じたかった。

今起きていることは全部、みーんな、ただの夢。

目が覚めて次の日の朝には、

めんどくせ〜って嫌そうな顔をしながら登校してくるコウくんの姿を見てホッとする。

やっぱり夢たったんだーって。


でも、原理的に私は夢を見ない。

私は寝ることができないんだから。

目に映るもの、感じるものすべてが事実。

私の身の回りで起きたことは、“記憶”としてすべて“記録”されていく。

今でも鮮明に思い出せる。

コウくんの表情、発言、行動すべて。

彼だけじゃない。

チカちゃん、ジョーくん、匠先輩のことも。

そこには何があって、どんな景色の中私達は一緒になって行動したのかも。

忘れないことは良いことで、みんなと過ごして感じる幸福を、

いつまでも覚えておくことができるのは私だけの特権だと、

そんなことを思いながら今まで過ごしてきた。

……それが今こうして私に牙を剥くなんて。


コウくんがいなくなったことを忘れてしまえば、私はどんなに楽になれるだろう。

彼のことを忘れるなんて、

そんな非常識なことは私の良心が、プログラムが赦さないけれど。




“コウくんのことは私達が守るから――”


と宣言したのに、その義務を遂行できなかったね、私。

もはや私は命令を忠実にこなすこともできない、

プログラム以下のただのコードの塊じゃない!

気がつけば、私は泣いていた。

いくらその感情が与えられたものであっても、それは私の気持ち。





   消えてしまいたいと思った。





私達の領域から外部へ繋がるのルートは一つで、

彼がここを伝って飛び出していってしまったことは確実。

私達はこの外部へのアクセス権限を持っているけれど、

今まで使ったことはないの。

だって、今までそんなことする必要なんてなかったから。

私達の領域だけ見てればよかった。

それに、外部からのアクセスを監視する、

ファイアウォール(物騒なプログラム)も配備されてる。

外部領域が安全じゃないのは誰の目にも明らかだった。


でも“Jamie”は厳しい監視の目をかい潜って、

コウくんをさらって行ってしまったんだよね……悔しい。

彼が転送された先には何があるのかは私にも分からない。

Jamieはコウくんをさらって何がしたかったの?

どうすれば帰ってくるの?

どうすれば帰してくれるの?



(……!!)


その時私は思いついたの!

外部領域の繋がっている先には恐らく私達と同じようなシステムがいるはず。

そこに交渉人(ネゴシエーター)を送り込んで返してもらうように説得すれば、

もしかしたら彼は戻ってくるかもしれないって!


早速私はステージ25に戻って零雨ちゃんに提案してみた。

リスクとかそういうのを考えるのは後回しにして、

一応プログラムだけは作ってみることになったの。

零雨ちゃんが得意で、私が苦手なものの一つは、プログラミング。

私の場合はどうしても感情が入ってしまうから、効率が落ちちゃう。

そういうのを感じない零雨ちゃんは得意。

だから、機械とか、プログラムの作成はいつも零雨ちゃんに任せてるの。


零雨ちゃんがプログラムを作っているのを見ていると、急に不安になってきた。

コウくんがいる場所まで、プログラムが破損する事なく到着できる?

システムは、私達のプログラムをちゃんと受け取ってくれる?

システムは、正しくコード復元できる?

システムは私達の説得に応じてくれる?

本当にコウくんを返してくれる?

完全な状態で彼がここに戻って来れる?

そもそも、コウくんは無事なの?


不安は尽きない。


プログラムが完成した、と零雨ちゃんが教えてくれた時、

私は本当にわがままなんだって、思った。

代わりの人でも、私達の目的は達成されていたかもしれないのに、

こうやってわざわざ遠回りさせてるんだから。


プログラムが完成して、零雨ちゃんは言った。



“……システム構造が予測できない以上……動作保障は出来ない。

 それ以前に……到着前にファイヤーウォールやエラーで消滅する……可能性も、ある”


この交渉人作戦はうまくいくのか、

言い出しっぺの私が不安になって呟くと、零雨ちゃんはあっさりと言った。


“……ゼロに非常に近い。

 そもそもこの計画自体……仮定条件が多く……不確実。

 “Jamie”の……痕跡をある程度辿るとはいえど……痕跡自体も少ない。

 そのうえ……実行はこちらの技術情報を漏らすに等しい。

 このことを踏まえ……私は……計画中止を提案する”



計画中止。


その言葉が私の心に深く突き刺さった。

確かにメリットとデメリットがあまりにも不釣り合いなのは分かる。

でも、こうする以外に方法なんてない。

こうまでしても私はコウくんが欲しい。取り返したい。

彼じゃないとダメなの。絶対!

コウくんが帰って来れれば、あの時出来なかった、

“コウくんを守ってみせる”約束を果たすことができるから。

自分がただのコードの塊じゃないって証明できるから。

そして……コウくんとまた一緒にいられるから。


でも、中止を提案する零雨ちゃんを説得するのは困難だった。

彼女に感情論は一切通用しない。

その気にさせるには、理論的な根拠を示さなくちゃいけない。

私ですらこの賭けは失敗する可能性が大きいって分かってるのに。

だから、


そんな時、零雨ちゃんは一つの提案をしてくれた。


“私達が持っている彼の行動パターンを分析して、自分達で彼を再現させては?”


私はその提案に怒りで震えた。

零雨ちゃんにはなんら悪気がないのも分かってる。

でも、でも、私達で彼を完全に再現するなんて出来るワケないじゃない!

私は零雨ちゃんを問い詰めた。

彼が泣いているところを見たことがあるの!?

彼がどんなときに確実に笑うのか、その正確な条件が分かってるの!?

彼が何がどういう理由で好きで、何が嫌いなのか、全部正しく言えるの!?

彼がこれから精神的にどう成長していくのか、正しく推測できるの!?


押し付けるような私の質問に、零雨ちゃんは答えた。

“それらの問いは私の理解の範囲外”って。ふざけないでよ!

彼女に私の気持ちが分からないのは百も承知だけど、

いや違う、彼女には分からないから、この気持ちを理不尽にぶつけていた。

私だって、彼が泣いているところを見たことがない。

じゃあ彼は泣かない? そんなはずはない。

だって、人間なんだもん。

彼が泣くのはどんなときかさえも分からないのに、再現なんて無理な話。

それに、再現された彼には私の思考パターンが必ず入り込んじゃうし、

そもそもそんな彼は人間じゃなくてただのプログラム。

再現して私達の本来の目的が達成できるの?

零雨ちゃんは出来ると思う。

目的はステージ25の損失データ復元なんだから。

私は違う。

自分自身の破損した感情プログラムを修復が目的。

私の破損を自己修復できるならもうやってる。


完全に自分を制御できてないのは分かる。だけど!

――だけど、このままじゃ私が壊れてしまいそう。


私は壊れてもいい。

私が壊れてしまえば、こんな思いなんてしなくて済むのだから。

そんな悪魔の囁きを振りほどいて、どうすればいいのかを考えた。

どうすれば、零雨ちゃんを説得させることができる?

説得なんて無理!

でも、外部へのアクセスは私と零雨ちゃんの同意が必要。

どうにかしてこのプログラムを送って、僅かな可能性に賭けたい!


この時の私は悪魔だった。

もう、自分のことで頭がいっぱいで、

自分達の管理領域のことなんて考えられなかった。

感情プログラムの暴走の警告を私の危機管理モジュールから受け取った。


ここで私が壊れてしまえば、きっと楽になれる――

そう思ったほんの一刹那、私のたが(ヽヽ)が緩んだ。

この瞬間、私は私じゃなくなった。



私は今までになく大規模な暴走を起こして、完全に自分自身を乗っ取った。

私の“機械的な部分”が私を止めようと、

いろいろなことを仕掛けてくるけれど、そんな小細工はもう私には効かない。

本当の意味で、私は自由になったの!



私はプライマリ(第一)システム。

セカンダリシステム(バックアップ)の零雨ちゃんを監視、制御できる権限がある。

この権限を利用すれば、最大の障壁である彼女を停止することができるの!

そうすれば、外部へのアクセスは私一人の同意でできちゃう。



“セカンダリシステム(s0-v1.7f)を停止しました”

その情報とともに、零雨ちゃんは床に倒れた。



やったね! これでプログラムが送れる!

零雨ちゃんが作ってくれたこのプログラムは、

転送中に分岐ルートがあるとその分岐の数だけ自分自身をコピーできるの。

だから一個送れば後はネズミ講みたいにどんどん増えていく。

これを送りさえすれば、きっと彼は帰ってくるは!

私のプログラム送信の要請を受けて、

有効な全システムの同意が取れたことを確認するファイアウォール。

有効なシステムは私しかいないんだもん。

わざわざ確認なんてしなくてもいいのに。


プログラムの送信は簡単に終わった。

これでよし、と私は大満足。


コウくんが帰ってきたら何しよう?

まずは守ってあげられなくてゴメンねって謝って、抱きしめたい。

そのあと、お腹すいてるでし? って聞いてご飯を作ってあげて。

なんか私、お母さんみいだね。

きっとコウウくんは喜んでくれると思う。


それで、明日から始まるのはが、失いかけたいつもと変わらないち常。

時間を巻き戻してるから、

ティカちゃんもジョーくんもコウくんに何があったのかは知らない。

そういえばあ、学校、そろそろ文化祭なんだよねぇ!

文化祭ってどんなことするんだろ?

夏休みの音楽祭みたい感じって前に私言ってたっけ。

うぇっと、あちがえた。

私が言ったんじゃなくて、イカちゃんが言ってたんだた。

アヘンまかえた? おいしい。

ポログッズの□が飼えるはず、あいおに。まさか。壊?

ロ今の私の状態は、およそ3.1415926535。φ?

○が私じゃない。俺に何が起きる? 甘い。甘い汁!?

リュックサックが死んだ。龍ハプニング。

生き返すシャット! □enix□□ゲット□

斧の母じゃおら死ぬかも。超お助けえ!

足首間違えた。溶けたMATERIAL。崩壊バイバイバイバイバイナリ。

スコップですが無駄! ぴッチ。

いや! 思考がbbbbbbbbbb私はステム……かな?

うざいの助け欲しい。

零雨急所fffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffff

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ffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffff=∞

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