表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

空いた隣席を、社交界の皆さまは静かに見ていらっしゃいました

最終エピソード掲載日:2026/05/19
「殿下の隣席は、もうお譲りいたします」
公爵令嬢イルゼは、扇を閉じてそう告げた。
礼をして、広間を出た。

十年、王太子の婚約者として、王宮の夜会を整え続けてきた。
名前で呼ばれることは、いつしか少なくなった。
代わりに、ご婚約者様、とだけ呼ばれていた。

婚約者の隣席は、毎回、乳姉妹に譲らされた。
殿下は「君なら分かってくれる」と繰り返した。
怒っているのではなかった。
疲れていただけだった。

ある朝、殿下は初めて「君のための席だ」と告げた。
その夜の広間で、その席には、また別の女性が座っていた。
イルゼは扉の外へ出た。
振り返らなかった。

回廊で、一人の文官が静かに立っていた。
その方は、十年前から、彼女の仕事を見ていた。
書類には残らない、見ていた人たちの記録があった。

譲り続けた隣席を、社交界の皆さまは、何と思って眺めていたのか。
名簿から、ある名前が消えるとき、流れは動くのか。
彼女の十年を、本当に知っていたのは、誰だったのか。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ