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亡き奥様を敬っていたのは、旦那様ではなく後妻の私だったのでは?

最終エピソード掲載日:2026/07/07
祭壇の白い花は、五年間、一度も枯れたことがない。
誰が替えているのか、この家の誰も知らない。

伯爵家の後妻マレーナは、今日も静かに給仕をする。
夫が語るのは、亡き先妻の思い出ばかり。
先妻ならこうした、と比べられて五年になる。

けれど、社交界が噂する先妻の遺産は、どこにもない。
あったのは、先妻が遺した借金の山だった。
それを返し続けてきたのは、名前も呼ばれない後妻だ。

質入れされた形見を、ひとつずつ買い戻す。
義理の娘の学費を、気づかれないまま工面する。
命日の祭壇に、白い花を絶やさない。

最後の借用書の期日は、命日の翌週。
完済のその朝、彼女は離縁状と、整えた帳簿だけを残す。

比べられ続けた家で、亡き人を悼んでいたのは誰だったのか。
祭壇の花が枯れはじめたとき、あの家は何に気づくのか。
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