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言の葉、本能寺に届かず

作者:とんぼ
最終エピソード掲載日:2026/07/29
天正十年(1582年)五月。
織田信長による天下布武の道筋が固まりつつある一方で、その陰には、誰にも知られぬ軋みと孤立が忍び寄っていた。

明智十兵衛光秀。
丹波の統治に心を砕き、朝廷との取次や家康の饗応役に奔走してきた男は、度重なる政略の転換、重圧、そして羽柴秀吉の台頭に追いつめられ、深い深い闇のただ中にいた。
自責と焦燥のなかで繰り返し胸に去来する、「なぜ――」という問い。史実においてその問いは、本能寺の不吉な炎へと姿を変えることとなる。

本能寺の変の動機については諸説あるが、もし光秀が過度のストレスによる「視野狭窄」に陥っていたのだとしたら。
そして、もしもその声なき悲鳴に気づき、静かに手を差し伸べた者がいたとしたら――。

確実な史実の枠組みと、歴史の記録に残された「余白」の間(はざま)で紡がれる、もう一つの物語。
一言の救いと微かな温もりによって孤立の淵から立ち返り、静かな平穏へと歩みを進めていく男たちの姿と、本能寺に届くことのなかった言の葉の行方を、どうぞ最後まで見届けていただきたい。
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