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スワイピング・ゼロ

作者:源三郎
最新エピソード掲載日:2026/11/06
指を横に払うだけで、人が消える。

肉体も、声も、帰りを待つ家族の記憶も。世界は何事もなかったように帳尻を合わせる。

神坂仁――通称ゼロ。世界OSに仕える、消去専門の掃除屋。

昼は路地裏で、忘れたい痛みを預かる「なんでも屋」。夜は命令ひとつで、誰かを世界から消してきた。

ある雨の夜。仁は、消去対象の少女と出会う。

「あなたには、わたしを消せない」

指先を弾いたのは、見たことのない赤い表示だった。

《READ-ONLY》

消せない少女、リア。

彼女は三十六年前の世界を知っていた。仁が忘れたはずの名前も。割れた卵の味も。

少女を消そうとする管理者。記憶を奪い、悲しみごと人を黙らせる街。逃げるほど、仁の中には、かつて消した者たちの声が積もっていく。

消すために使ってきた指で、誰かを残せるのか。

「世界がお前をバグだと言うなら」

仁は、雨の中で少女の手を掴む。

「俺が、この世界のほうを間違いにする」

消された名前を取り戻すために。

ひとりの少女を、もう二度と“礎”にしないために。

これは、人を消してきた男が、世界に残された痛みを拾い直す物語。
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