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領収書屋さんと霧の中の灯台 ――北町商店街、最後の一枚まで愛で保護します――

作者:乾為天女
最新エピソード掲載日:2026/06/25
 北町商店街の空き店舗で、家計簿代行や書類整理、昼食づくりを引き受けている主夫の大輝は、町の人から「領収書屋さん」と呼ばれている。冬の霧が深い北町には、昔から帰り道の目印として親しまれてきた旧灯台があった。けれど十一月下旬、灯台の下部倉庫で小火が起き、再開発会社は危険建物として取り壊しを急がせる。
 そんな中、大輝の店へ栗皮茶色の古いファイルが運び込まれる。中に詰まっていたのは、灯台の修繕費、台風の日の非常食、迷子を保護した時の品物、避難者へ出した緑茶代など、何十年分もの領収書だった。最初はただの紙束に見えたそれは、町の人々が誰かの帰り道を守り続けてきた証だった。
 定年後の可純は勢いだけで撤去反対を叫び、子どもたちは「灯台保護隊」を名乗る。中学生の真喜子と早貴は聞き取りを始め、大学生の麻央は土地台帳を調べ、航貴は領収書を入力しながら灯台の歌を教える。一方、大輝は再開発会社から高額な整理依頼を受け、家計の苦しさと町の記録を守る思いの間で揺れる。さらに妻さやの財布から出てきた「星のような君」という領収書が、夫婦の誤解を深めていく。
 小火の原因、忘れられた寄付、霧の日の迷子、秘密のレンズ修復。小さな紙切れに残された名前をたどるうち、大輝は気づいていく。家事も、見守りも、差し入れも、誰かを待つ時間も、名前のつきにくい働きは確かに人を支えているのだと。
 これは、失望を笑いでほどき、喜びを一枚ずつ受け取り直す、北町商店街と旧灯台の物語。
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