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離婚を申し立てた日に、夫婦でしか救えない赤子を任されました

最終エピソード掲載日:2026/09/11
もう、次の約束を待つのはやめよう。

王立産院の治癒師エリサは、そう決めた。
結婚七年目の夫へ、離婚を申し立てた。

夫のアルノーに愛人はいない。
彼はただ、仕事を優先し続けてきた。
エリサの痛みも、話し合いも、いつも後回しだった。

離婚申立書を出したその日。
生まれたばかりの王女が、産院へ運び込まれる。
その身体には、見たこともない黒い紋が広がっていた。

治療しようとした者には、苦痛が逆流する。
エリサ一人でも、アルノー一人でも耐えられない。
二人の婚姻紋を繋いだ時だけ、赤子の呼吸は戻った。

この国では、治癒師の夫婦だけが使える共有治癒がある。
痛みと魔力の負担を、夫婦の間で分ける魔法だ。
そして今、王女を診られるのは二人しかいない。

けれどエリサは、離婚を取り下げるつもりはない。
患者を救うことと、誰の妻でいるかは別だからだ。
そんな彼女の前で、王女の黒い紋は再び動き始める。

離婚まで残された時間は、わずかしかない。
夫婦でなくなろうとする二人は、夫婦でしか救えない命を前に、何を選ぶのだろう。
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