一メートルの凪
最新エピソード掲載日:2026/05/02
深夜一時を過ぎたコインランドリーに、女性が駆け込んできた。
息が上がっていた。膝の上のスマートフォンが、立て続けに震えていた。彼女はそれに触れなかった。
名前も知らない。事情も訊かない。ただ、木曜と日曜の深夜に、同じ場所で洗濯機が回るのを待っている。三台分あった距離が五台分に広がり、また縮まり、やがて一台分もなくなる。
八月の終わりから翌年の四月まで。会話は最小限。起きる出来事は、ほとんどない。それでも何かが、確実に変わっていく——洗濯機のリズムが、吐く息の深さが、隣に座る肩の角度が。
何もしないことが、誰かを救うことがある。深夜のコインランドリーを舞台にした、とても静かな再生の物語。
息が上がっていた。膝の上のスマートフォンが、立て続けに震えていた。彼女はそれに触れなかった。
名前も知らない。事情も訊かない。ただ、木曜と日曜の深夜に、同じ場所で洗濯機が回るのを待っている。三台分あった距離が五台分に広がり、また縮まり、やがて一台分もなくなる。
八月の終わりから翌年の四月まで。会話は最小限。起きる出来事は、ほとんどない。それでも何かが、確実に変わっていく——洗濯機のリズムが、吐く息の深さが、隣に座る肩の角度が。
何もしないことが、誰かを救うことがある。深夜のコインランドリーを舞台にした、とても静かな再生の物語。