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家のため国のためと何度も言われましたので

最新エピソード掲載日:2026/07/02
嫌だと口にする権利を、アデリナは忘れていた。

王宮礼法局で働く侯爵令嬢アデリナは、王妃の慈善会や外交夜会を陰で支えていた。

離婚した女性の席を守り、未亡人の評判を守り、誰かが傷つかないよう礼法を整える日々だった。

けれど王妃は、そんな彼女に微笑む。

亡妻を失った伯爵を、あなたなら支えられるでしょう。

それは善意の言葉で、アデリナの望みを尋ねない命令だった。

誰も彼女が傷つくとは思わない。

聡明だから分かる。

聞き分けがいいから受け入れる。

そう信じられてきた彼女は、最後の慈善会の席次を整える。

そして、礼法局の鍵と辞表を置いて王宮を去る。

王妃の善意を美談に変えていたのは、誰だったのか。

アデリナが守っていた椅子の意味を、王宮はいつ知るのだろう。
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