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私を誰だと思っているの? ――婚約破棄された元令嬢ですが、MBAは差し押さえられませんでした

作者:かおるこ
最終エピソード掲載日:2026/06/01
高い塔から落ちた日、

人々は言った。

「終わった」

「もう価値はない」

「財産も地位も失ったのだから」

銀行は扉を閉ざし、

新聞は倒産の記事を載せ、

婚約者は背を向けた。

まるで嵐の海へ

ひとり放り出されたようだった。

けれど私は知っている。

失われるものと、

失われないものの違いを。

屋敷は消えた。

宝石も消えた。

肩書きも消えた。

けれど、

夜更けの図書館で読み込んだ一冊一冊は、

誰にも奪えない。

眠気と戦いながら書いたレポートは、

差し押さえられない。

失敗を分析したノートは、

競売にかけられない。

何百回も積み上げた知識は、

私の血となり骨となっている。

だから私は泣かない。

六畳一間の古いアパートで、

安い机に向かい、

白いホワイトボードへ未来を書く。

財産はゼロ。

けれど可能性はゼロじゃない。

むしろ、

何もないからこそ自由だ。

倒産したのは会社。

破綻したのは事業。

私自身ではない。

市場は変わる。

景気も変わる。

人の心も変わる。

けれど努力は残る。

学びは残る。

経験は残る。

そして、

何度でも立ち上がる力になる。

婚約破棄?

結構。

見限りたいならどうぞ。

でも覚えておいて。

私の価値は、

誰かの名字の後ろにぶら下がっていたわけじゃない。

私は私自身の足で歩き、

私自身の頭で考え、

私自身の手で未来をつくる。

だから今日も前を向く。

冷たい風の吹く朝も。

眠れない夜も。

失敗した日も。

私は歩く。

その先に、

まだ見ぬ景色があると信じて。

そしていつの日か、

世界が驚くほど高い場所から、

私は静かに微笑むだろう。

私を誰だと思っているの?

――婚約破棄された元令嬢ですが、

MBAは差し押さえられませんでした。
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