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深い夜、水路荘では好きなものを持ち寄る

作者:乾為天女
最新エピソード掲載日:2026/07/22
水路町に建つ築八十二年の共同住宅「水路荘」。その一階で写真衣装室を営むイザベラは、仕事には現実的なのに、自分に関わる面倒事だけは後回しにしてしまう女性だった。

五月二十五日の夜、携帯電話の電池が切れた彼女は、隣で修理店を営むラビーから充電器を借りる。ところが、古い延長コードへ差し込んだ途端に火花が散り、水路荘は停電。焦げた壁の中から、廃止されたはずの第七分水門の台帳と、かつて水門を管理していた女性ミレナの聞き書き帳が発見される。

さらに、イザベラが三週間も開封せずにいた封筒から、水路荘を十週間後に解体するという通知まで現れた。

住まいと仕事場を同時に失いかねない七人の住人は、建物の床下を通る古い灌漑水路を調べ始める。励ますことが得意なラビー、失敗を恐れて大学を休学したナサン、人の声をラジオで届けるリオン、旧水路の廃止に関わったドアル、石壁の奥から不思議な音を感じるアウネ、そして過去を語ろうとしない管理人イアム。

年齢も職業も抱える事情も違う七人は、互いの仕事を手伝い、それぞれの「すきなもの・すきなこと」を聞き取っていく。その過程で、明るさの陰に隠した不安、華やかな衣装の裏側に縫い込まれた喪失、正しい判断だけでは救えない暮らしが、少しずつ見えてくる。

しかし、水路に関する十三年前の記録が失われていることが判明し、住人たちが隠していた過去や過ちも明るみに出る。町の水をどう分けるのか。誰の暮らしを優先するのか。そして、分かり合えない他人と、どのように同じ場所で生きていくのか。

借りた充電器から始まる騒動を通して、七つの異なる人生が交わっていく
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