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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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「アンデッド!?」

「お前と違って姿は変えていないぞ」

「見れば分かるわ。ンフ、ごめんなさいね」光輝魔力を発する黄色く輝く剣を収めるビッグママ「また会いに来てくれるなんて、嬉しいわ♡」

「メトゥス、皆を呼んできてくれ」

「障壁の稼働を忘れないでね」

「キュ、キュル」


デーモンの死体を漁るビッグママ。

「それで、私に何の用かしら?」

「話せば長いんだが、お前の事はセレスチャルだと思っていた。悪い気配はしなかったんでな」

「だったら当てが外れたわね」

「良い意味でな。ヘルゲートの形成に手を貸してもらいたい」

「偶にいるのよね。もう随分とやってないわ。力になれるかどうか」

「だがデーモンスレイヤーなのだろう? この部屋を見れば分かる」

「これは私のおじいちゃんのよ」

立ち上がるビッグママ。


「リーケン、ママを独り占めだなんて常連が悲しむ」

マーラ達が入ってくる。

「どこもかしこもぶっ飛びだな。この街はデーモンだらけなんだな〜」

サムがデーモンの死体をつつき嘆く。

「あら、まだ狐ちゃんは生きてたのね」

「う、美しい」

マーティンはビッグママに見惚れている。

「マーラは仲間だからな」

「生者を想うアンデッドだなんて、ホント、世の中まだ知らない事が多いわね」

「それで、手を貸してくれるのか?」

「あなたの噂は飽きるほど聞いてたわ」

「どうしてだ?」

「ここはちょうど酒場だからね。猫ちゃん。正直、デーモンがアンデッドに変わったところで、どうという話じゃないと思ったけど。狐ちゃんの話を聞いて、あなたに少し希望を抱けたわ。もしかしたら、このデーモン達の変性を解いたのもあなたなの?」

「城で妙な装置を止めた。その影響かもな」

「素晴らしいわ。そうね……手を貸してもいい。お代は頂くけど。具体的にヘルに行ってどうするつもりなの?」

「この街を掌握しているデーモンに、挨拶にいくんだ」

「そう」

「こいつに案内させる」

「キュル」

「準備ができたら来てくれ。手持ちが少ないんだが、これでいいか?」

手持ちのヘルコインを渡す。

「足りないわ」

「駆け引きしている暇はないんだ」

「そうじゃなくて、お願いがあるの」

「何だ?」

「恐らく、私の祖父が囚われてるかもしれない。だから解放してあげて欲しいの」

「祖父の名は?」

「ルッディ、マーシアよ」

「あの有名なルッディ家!?」

「昔の話よ。司祭さん」

「あぁ♡」

「デーモンを排除できたら、喜んで手を貸そう」

「ンフフ、期待してる。それじゃあっと、さっそく準備に取り掛かるわね」


メトゥスを残し、上階へ戻る。


「いや〜、にしてもあのオーナーは心を奪われる方だった」

目を瞑り腕を組み、何度も頷いているマーティン。

「そりゃそうでしょ。魔術も剣術も見事で、こんなところで1人で酒場を切り盛りしているんだから」

「私が言っているのは、単純に見た目だ」

「あぁん」

マーラが軽蔑するような目でマーティンを見ている。

「そ、そんな目で見るな」

「まあ、偉大なリーケンでも惚れるような人だもんね。無理はないか〜」

「俺を巻き込むな。それに、俺は男に興味はない」

「なに!?」

目を見開き食い入るように見てくるマーティン。

「ただの冗談でしょ」

「いいや」

「う、嘘だろ…。あんなに美しいのに…。嘘だと言ってくれ」

「1人に拘る理由が分からんな」

「今のセリフ、リーウィアに言ったら面白そう」

「ふむ、今度言ってみよう」

「そうじゃない! もう何を信じたらいいのか分からなくなってきた。実は、君達はただの幻覚で、私はあの陰険な場所で気絶していて、まだ夢を見ているだけなのかもしれない」

「重症ね。司祭を見る司祭が必要だわ」

「今は鼠だしな」

「ンフフ♪」

「笑い事じゃない。あぁ…1つ聞きたい。彼女は…その…生物学的にか? それとも…」

「ただの魔法だ」

「はぁ〜、それなら安心だ」

「慣れっこなの?」

「サキュバスが教会に押しかけてくる事はよくあったからな。ふぅ〜、崇高な心があれば対処できる。対処できる。ただの魔法だしな」

「魔法を極めれば絶世の美女。何でも願いが叶うのね」

「お前の願いは不死だろう?」

「まあね♪」

「ベースに戻るぞ」



── ベース ──


アンデッド兵が全て集結し、其々が武器を打ち、盾を合わせ、魔力を帯びたアクセサリーを身に着けている。


「わお……」

マーラが戦闘の身支度を整えている多数のアンデッド兵達を呆然と見つめている。


中央で指揮を取っていたニオスが出迎える。

「準備は順調か?」

「はい。全てが順調です。取り分け、初動の戦いに関してはほぼ準備が整っております」

「流石だなニオス」

「いえいえ、師には及びません。問題のヘルゲートに関してですが、特定の資源が不足しております。些か時間を要するかと」

「その心配はない」


「ちょっと離してくれる?」

「ニオス様、怪しい者を捕らました」

アンデッドタロンがビッグママを連れてくる。

「離してやれ」

「はい……」

「手荒な歓迎どうも」

「まだ皆目覚めたばかりだからな。ニオス、この者はビッグママという。デーモンスレイヤーだ」

「本当に街にアンデッドの軍隊がいたなんて」

「ヘルゲートに足りないのはカルデラストーンと純血デーモンの生き血だ」

「持ってるわよ」ビッグママが背負っていた1本の見事なロングソードと、布袋に入った赤い炎が鼓動しているカルデラストーンを手渡す「最も、どちらも私のではないけれど」

「祖先のだったか」

「ええ、強大なデーモンを狩れるのなら、アンデッドに渡しても祖先も本望でしょうしニオスが念動で受け取る。

「ではさっそく取り掛かります」

「私も手伝うわ」

ニオスが俺を見てくる。ニオスに頷き、ニオスとビッグママが奥へ向かっていく。

「エスティナ、来てくれ」

「ニオス、エスティナに少し話があるんだ」

「先に始めといて」

エスティナがこちらへ向かってくる。

「お前達も準備をしておけ」

「はい」

「キュル」

「オッケー」

「待てマーラ」

マーラ以外が準備に向かう。

「なに?」

「お前はダメだ」

「なんで?」

「ヘルは生者にとって赴くだけでも危険な地だ」

「こんな楽しそうなパーティー見逃せって?」

「そうだ」

「嫌よ。私も行く」

エスティナが来る。

「用件は?」

「アンデッドのアクセサリー感謝する」

「どういたしまして」

「ヘル用だろ?」

「あなたなら言わなくても分かるでしょ」

「強力なのを1つ追加で頼む」

「時間が掛かるわ」

「頼む」

「まあ、念の為用意してたの。準備は万全にしないとね」

「感謝する」

エスティナから首飾りを受け取り、エスティナが離れていく。

準備を整えているマーラ。

「マーラ、ダメだと言っただろ」

「指図しないで、私が決める事でしょ」

「お前の為だ」

「嬉しい」

「これを」

エスティナから受け取った首飾りを渡す。

「その場から動けなくなる首飾りとか?」

「炎術への抵抗を増加させる付与がされている。エスティナの代わりにお前が行く事になった」

「あぁ……必要ないわ」

「マーラ、ヘルは入るだけでも生者にとって苦痛だ」

「はい失敗。次の説得どうぞ」

マーラが予備の短剣をいくつも足に装備していく。

「止めはしない。ただ持っておけ」

「……ありがとう」

「耐性を付くが、苦痛までは和らがないぞ」

「デーモンスレイヤーも生者でしょ?」

「どの専門家も特殊な訓練を積むはずだ。彼らだって例外ではないだろう」

「私が足手まといになった事なんてあった?」

「フフ、いいや。ただ、死ぬなよ」

「あなたもね」

マーラの元を離れる。


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