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「私がトドメを刺す」
マーラが前へ出る。
【⇄】「ダメだ。こいつは殺さない」
「はぁ、はぁ。ふぅ〜。どうして?」
「敵意は感じられなかった。それに情報が欲しい」
「オーケー」
マーラが短剣を収めて下がる。
「あぁ……私はなんて事を……」
女ドワーフは抵抗する様子もなく、悲しげに小さな声で嘆く。
【⇄】同情する。責任を追及する。
「お前のせいじゃない」
「いえ私のせいよ……。すべて…私が悪いの。お願い、殺して」
「お前はデーモンに操られていただけだ。何も悪くない」
「デーモン……そう…デーモン。すべてはあの過ちから始まった…」
「お前を拘束しているのは自死させない為だ。お前が死を選べば、喜ぶのデーモンだからな」
「…………」
「良ければ話してくれ。最後まで聞こう」
「……ありがとう。でも…どこから話せばいいのか」
「落ち着け。思い出せるところからで良い」
「ええ…。私は…このロクスソルスの領主である夫の元へ嫁いだの。私は昔から魔法には才があって。でもそれ故に、自身に高慢になってしまって…危険だという夫の忠告を聞かず命を落としてしまった。夫はなんとしてでも私を蘇らせようと必死だった。そして、そんな夫の前に現れたのが貴方のようなリッヂ。でも本当はリッヂじゃなかった。デーモンだったのよ。夫が分かっていたかどうかは、今となっては知りようがないけれど。最終的に夫はデーモンと誓約してしまい、行方知れずに。私は蘇ったものの、魂はデーモンに囚われたまま、こうして怒りと後悔で魂を埋められ、デーモンの玩具にされた。それからずっとここに1人で長い間、縛り付けられたままだったの。心配して会いに来てくれた人、助けようとしてくれた人……みんなクリスタルにされてしまったわ。あなた達が彼らを解放してくれたおかげで、頭の中に響き渡っていた彼らの声が止んで、意識を取り戻せたの。本当に感謝しているわ」
女ドワーフの拘束を解き、降ろす。
「気分はどうだ?」
「悪くないわ。安心できているからかしら。何だか…とても長い悪夢の中にいた感覚だった」
「俺は装置を見てくる」
「大丈夫? 立てる?」
「え、ええ。え〜と……」
「マーラよ。こっちはサム」
「よろしくニャ」
「私はイエナ。この人はマーティン。鼠に見えるけど本当は司祭なの」
「あら、大変なのね」
「お互いにな。だからあまり思い詰めない方が良い。今は世界の方がおかしいのだから」
これは抑炎の装置か。
助けられたのもあるが、このままではデーモンが来ても気付きにくいな。
装置のコアを抜き、停止させる。
これで街に隠れているデーモンも簡単に炙り出せるだろう。
ここはアンデッドデーモン達に守らせ、次に向かおう。
「ここでの用は済んだ。次に向かうぞ」
「あの、私はどうしたら……」
「もう自由だ。好きにするといい。だが一先ず情勢が落ち着くまでは、共にいた方が良いかもな。近くにベースがある。そこにいるべきだろう」
「ありがとう」
「メトゥス、塔まで…名を聞いていなかったな」
「アリア」
「ではアリア。メトゥスについていけ」
「メトゥス、バディホーにベースまで送るよう伝えろ」
「キュル」
次の目的地へ向かう。
── キングロブスター亭。
「問題なかったか?」
「キュル」
「ここで一杯やろうって?」
「そんなところだ」
中へ入る。
相変わらず賑わっていた。奥のカウンターへ向かう。
2人のドワーフが酒を飲み談笑している。
「おい見ろよ。本当にアンデッドだぜ」
「噂は本当だったんだな」
「この街を乗ってるって話だ」
「おっかねーなー。おぉ、おい、こっちに来るぞ。目を合わせるな」
カウンターに着く。
オーナーがいないな。
側に座っている者に声を掛ける。
「オーナーを知らないか?」
「うぅ…。お前だけじゃない。みんな探してるさ。あぁ…アンデッド? 飲み過ぎちまったみたいだな」
「少し前に見かけたぜ。どこ行ったんだか知らんがな。すぐ戻ってくるだろ。ビッグママがいなけりゃ、ここで飲む意味がねーってのによー」
「まったくだなぁ」
「「ハッハッハッ」」
端のカウンター入口へ向かう。
マーラが奥のテーブルで獣人の男と話していた。
「帰ったんじゃなかったの?」
「帰ろうとしたんだが、ウェルミスの軍勢が暴れまわってるって聞いてな。奴らの串焼きにされるのは嫌だったんだ」
「ウェルミスって、それ本当なの?」
「少なくとも確かめに行きたいとは思わないな。ジャスミンはどうした?」
「ジャスミンはもういないわ。殺されたの」
「あぁ…それは気の毒になマーラ」
「ええ、友人を亡くすのはいつでも辛いわ」
「余計にここから早く離れたくなった。それで、デーモンにやられたのか?」
「幸い吸血鬼よ」
「魂は無事な訳か。唯一の救いだな」
「まあね。あなたも婚約者探し頑張って」
「ああ。今度は田舎の平凡なお嬢さんにするよ」
俺に気が付くとカウンター入口を立ち塞ぐシェフの男。
「ア、アンデッド……悪いが」
「オーナーに借りがある。今すぐ会わせろ (喝)」
「あ、う、む、無理だ」
「お前でその借りを清算しても構わないんだぞ (脅)」
「オーケー、オーケー…さあ入ってくれ」カウンター内へ入る「面倒事は御免だ。ヴォイドに逆らうつもりなんてないんだ」
「分かってる。オーナーはどこだ?」
「何人かのシェフと給仕を連れて、地下の貯蔵庫に行ったよ。それっきりさ……嫌な予感がするんだが、オーナーには衛兵を呼ぶなよきつく言われてて…」
「貯蔵庫はどこだ?」
「あの階段だよ」
指差す貯蔵庫へ向かう。
「イエナ、邪魔が入らないようここで見張っておいてくれ」
「はい」
ドアを開け地下への階段を降りる。
階段には何重にも障壁が張り巡らされていた。
メトゥスと共に障壁をすり抜け、階段を降りていき、障壁装置の切り替えスイッチを押す。
障壁が消えた。
更に地下を進んでいく。
食料や樽酒などが大量に保管されていたが、オーナーや他の者の姿はどこにも見当たらない。
「仕掛けがあるはずだ、探せ」
「キュル」
壁は…特に異常はないな。
背丈ほどある樽酒を軽く叩いていく。
どれも入っているか。
端にある最後の樽酒を叩くと不自然な音がした。
「はぁん。これだな。メトゥス」
「メトゥスが野菜を抱え、触手に吸収途中だった」
「摘み食いするな」
「キュル (旨い)」
「ンフフ、ここだ」
念動で酒樽の前面の蓋を取る。
すると接地した壁にはドアが設けられていた。
樽酒は二重になっており、間には液体が入れられているようだった。
樽酒奥のドアを開け、中へ入る。
中へ入ると明かりが灯され、地面には死体が散乱していた。
引き千切られた白いシェフの服を着ているデーモンや同様の給仕服のデーモンが倒れていた。
デーモンの切断された頭部や腕、脚が散乱している。
迫る攻撃を念動で受け止める。




