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その指輪、彼女に差し上げてください

最終エピソード掲載日:2026/05/31
私に贈られたはずの指輪は、いつも別の指の上で光っていた。
フィオナは婚約者の家を、誰にも気づかれぬまま支えてきた。
贈り物の宛名は、なぜか彼女を素通りする。
面倒事の宛名だけは、いつも正確に届く。
婚約者は優しい。
ただ、隣の席も、贈り物も、いつも乳姉妹が先だった。
怒鳴ったわけではない。
泣いたわけでもない。
ある日フィオナは、母の形見にまで手を伸ばされて、静かに気づく。
私は、ただ疲れたのだ。
この物語の鍵は、彼女が長年つけ続けた一冊の控えにある。
誰にも頼まれず、ただ癖で書き留めてきた記録。
それが、思いがけない形で動き出す。
軽んじられた働きは、抜けて初めて、その穴の大きさで知られていく。
そして、彼女の手元の温度に気づいていた人が、一人だけいた。
名前を持たない空気として生きてきた令嬢は、その席を降りる。
降りた先で、彼女は何を選ぶのだろう。
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