姉の代わりに処方を書くのをやめました ~白い結婚の夫だけが、私の名を知っています~
最終エピソード掲載日:2026/08/15
三年間、姉の名前で薬を作っていた。
誰も気づかない。
礼を言われたこともない。
ローゼは、薬房を営む子爵家の次女。
処方を組むのも、危険な配合を止めるのも彼女だ。
けれど紙に残るのは、いつも姉の名前だった。
家族なのだから。
そう言われるたび、彼女は黙って筆を執った。
政略で嫁いだ先で、夫はこう告げる。
一年で離縁する。
顔を合わせる必要はない。
白い結婚。
離れで薬草を育てる暮らしを、ローゼはむしろ歓迎した。
静かで、誰にも急かされない。
ある朝、彼女は夫が飲もうとした瓶を止める。
その二つを同時に飲めば、心の臓が止まる。
瓶に貼られた処方箋は、二年前に彼女自身が書いたものだった。
姉の字で、書き写されていた。
そして一箇所だけ、分量が違っていた。
その夜、ローゼは短い手紙を書く。
三行だけの手紙だ。
今後、処方は書きません。
書かないと決めた人の名前は、どこにも残らない。
では、書いていたことを、誰が知っているのだろう。
誰も気づかない。
礼を言われたこともない。
ローゼは、薬房を営む子爵家の次女。
処方を組むのも、危険な配合を止めるのも彼女だ。
けれど紙に残るのは、いつも姉の名前だった。
家族なのだから。
そう言われるたび、彼女は黙って筆を執った。
政略で嫁いだ先で、夫はこう告げる。
一年で離縁する。
顔を合わせる必要はない。
白い結婚。
離れで薬草を育てる暮らしを、ローゼはむしろ歓迎した。
静かで、誰にも急かされない。
ある朝、彼女は夫が飲もうとした瓶を止める。
その二つを同時に飲めば、心の臓が止まる。
瓶に貼られた処方箋は、二年前に彼女自身が書いたものだった。
姉の字で、書き写されていた。
そして一箇所だけ、分量が違っていた。
その夜、ローゼは短い手紙を書く。
三行だけの手紙だ。
今後、処方は書きません。
書かないと決めた人の名前は、どこにも残らない。
では、書いていたことを、誰が知っているのだろう。
第一話 一年で離縁するそうです
2026/08/15 16:45
第二話 家族なのだから、と言われましたので
2026/08/15 16:45
第三話 セヴラン:妻の名を知らなかった
2026/08/15 16:45
第四話 ユリア:妹は三日で折れる
2026/08/15 16:45
第五話 ローゼ:署名欄に、名前を書きます
2026/08/15 16:45
第六話 バルドー子爵:聞き分けのいい娘だと思っていた
2026/08/15 16:46
第七話 ローゼ:戻る義務はありません
2026/08/15 16:46
第八話 ローゼ:私の名を呼ぶ人
2026/08/15 16:46