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愛されないと枯れる聖女ですが、隣国の冷徹王子に溺愛されて規格外に覚醒しました

作者:かおるこ
最終エピソード掲載日:2026/05/29
私はずっと、

雨の降らない庭の花でした。

咲けと言われ、

癒やせと言われ、

守れと言われ、

ただひたすら光を差し出していたのに、

誰も私の名を呼ばなかった。

誰も私の手を握らなかった。

誰も、

「ありがとう」

より先の言葉をくれなかった。

だから少しずつ、

花びらは色を失い、

根は乾き、

心は静かに枯れていった。

それでも私は祈った。

誰かのために。

国のために。

明日のために。

けれど最後に返ってきたのは、

冷たい婚約破棄の言葉。

追放の馬車。

降りしきる雨。

泥に沈む身体。

ああ、

私の人生はここで終わるのだと思った。

その時だった。

凍える指先を包む、

大きな手があった。

「生きろ」

その一言は、

どんな魔法より温かかった。

愛されることを知らなかった私に、

あなたは毎日、

小さな春を運んできた。

湯気の立つスープ。

窓辺の花。

菫色のドレス。

ぎこちない笑顔。

不器用な優しさ。

それは奇跡なんかじゃない。

私がずっと欲しかったものだった。

愛されるたび、

胸の奥で光が生まれた。

枯れていた泉が満ちていく。

凍っていた大地に芽吹きが訪れる。

そして気づいた。

私を強くしたのは、

聖女の力じゃない。

愛だった。

誰かを信じること。

誰かに信じてもらうこと。

それが奇跡の種だった。

かつて私を捨てた人たちは、

私が失われたと思っただろう。

違う。

私は失われたのではない。

ようやく見つけてもらえたのだ。

だから今日も、

白百合の咲く庭で笑う。

私を抱き寄せる人の腕の中で。

愛されるたびに光は増し、

愛するたびに世界は優しくなる。

枯れかけた一輪の花は、

今では国を照らす朝日となった。

そして私は知っている。

本当の奇跡とは、

世界を救う力ではなく、

たった一人から向けられる、

変わらない愛なのだと。

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