王宮の招待状に、私の名前は書かれていませんでした
最終エピソード掲載日:2026/05/20
招待状の宛名から、私の名前が消えていた。
四度目になる。
いつものことだ、と紅茶を一口だけ飲んだ。
侯爵令嬢ローズマリーは、公爵令息フィリップの婚約者だった。
婚約から三年。
社交界の席順から名前が抜けていく日々が、いつのまにか日常になっていた。
ある春の朝、王宮からの招待状にも、私の名前はなかった。
代わりに書かれていたのは、義妹の名だった。
私はその朝、欠席の返書をはじめて自分の名で書いた。
それは、私の意思で出すはじめての公的な書面だった。
そして、それを受け取る方は、私の知らないところで、私の名前を書き戻していた。
王宮儀礼長補佐サン=クレール伯爵閣下。
銀の徽章をつけた、お顔をすぐには思い出せない方。
怒鳴ったわけではない。
泣いたわけでもない。
ただ、私はもう、自分の名前を呼ばない場所には、足を運ばないと決めた。
招待状の宛名は、家の意思の表れ。
席順は、家の格の表れ。
そして使用人の口は、家そのもの。
私の三年は、いったい誰の目に映っていたのか。
四度目になる。
いつものことだ、と紅茶を一口だけ飲んだ。
侯爵令嬢ローズマリーは、公爵令息フィリップの婚約者だった。
婚約から三年。
社交界の席順から名前が抜けていく日々が、いつのまにか日常になっていた。
ある春の朝、王宮からの招待状にも、私の名前はなかった。
代わりに書かれていたのは、義妹の名だった。
私はその朝、欠席の返書をはじめて自分の名で書いた。
それは、私の意思で出すはじめての公的な書面だった。
そして、それを受け取る方は、私の知らないところで、私の名前を書き戻していた。
王宮儀礼長補佐サン=クレール伯爵閣下。
銀の徽章をつけた、お顔をすぐには思い出せない方。
怒鳴ったわけではない。
泣いたわけでもない。
ただ、私はもう、自分の名前を呼ばない場所には、足を運ばないと決めた。
招待状の宛名は、家の意思の表れ。
席順は、家の格の表れ。
そして使用人の口は、家そのもの。
私の三年は、いったい誰の目に映っていたのか。
第一話 招待状の宛名
2026/05/20 12:06
第二話 別の茶会へ
2026/05/20 12:06
第三話 サロンの空席
2026/05/20 12:06
第四話 観劇のボックス
2026/05/20 12:06
第五話 王妃の茶会
2026/05/20 12:07
第六話 贈答記録の不備
2026/05/20 12:07
第七話 線を引く
2026/05/20 12:07
第八話 婚約解消
2026/05/20 12:07
第九話 招待状が減る
2026/05/20 12:07
第十話 名前を呼ばれて
2026/05/20 12:07