↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

クロス・ナラティブ(Cross-narrative)ミステリー小説

狂乱のコンチタート

作者:隠岐群青
最新エピソード掲載日:2026/10/24
 二〇二六年十二月三日の朝、古楽のチェロ奏者・早瀬奏は、指揮者・白洲恭介の遺体を見つける。暖炉の灰には、指でなぞった三つの文字が残されていた。S、O、L。白洲が十五年待ち、ようやく上演しようとしていたヴィヴァルディの歌劇《狂えるオルランド》の公演は、十七日後に迫っていた。
 十五年前の冬、十七歳だった奏は、古楽の大家・鳴海宗一郎の合宿で火事に遭い、煙の中から一人の歌い手に救い出された。その夜、鳴海とソプラノ歌手・朝霧千尋が命を落としている。事件を担当する刑事・久我慎一郎の父は、その火事を最後まで調べ続けた刑事だった。奏は、あの夜の歌声の主を、いまも探している。
 白洲は、奏のチェロケースに、一枚の古い楽譜を遺していた。歌詞の頭の文字を縦に読むと、ARSI。燃えた、とも、恋い焦がれた、とも読める言葉。その下の低音には、同じ音を叩き続ける「怒りの刻み」が並び、その数が、小節ごとに揃っていない。灰の三文字は、なぜ犯人の名前ではなかったのか。奏はチェロを構え、刻みを腕で数えはじめる。
 物語は、一七一三年からのヴェネツィアと交互に進む。写譜工房の娘マッダレーナは、人前では歌わない写譜師ジローラモの、誰も知らない歌声を聴いてしまう。彼が想いを寄せるのは、歌をトランクに詰めて劇場を渡り歩く歌い手、ベッタだった。赤毛の司祭ヴィヴァルディの劇場で、名前のない音楽が書かれ、写され、誰かのものになっていく。
 現代では、若い歌い手が夜の庭で襲われ、焼けたはずの楽譜が水の底から現れ、一人の男が姿を消す。疑いは揺れ、公演の日だけが近づいてくる。三百年前、誰にも見上げられない低音に刻まれたもの。十五年前の火事の夜に、燃やされたもの。二つの時代の物語が、同じ一つの音へ向かって、狂乱していく。
 名前を書くことは、裁くことなのか。名前を書かずにおくことは、赦しなのか。歌い手の足元で「地面の声部」を弾き続ける者たちの、愛と嫉妬と沈黙をめぐる音楽ミステリー。

※カクヨムにも同時投稿しています。

10/22 推理(連載) 日間 11位にランクインしました。

皆様の応援ありがとうございます!必ず完走します!
第一話 炎の二重唱
2026/10/21 08:00 (改)
第二話 灰の三文字
2026/10/21 11:50 (改)
第四話 ベッタのトランク
2026/10/22 08:00 (改)
第五話 父の事件
2026/10/22 11:50 (改)
第六話 ソの音
2026/10/22 20:00
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。