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希望の物語第21章「ヨンユ市場へ」

いつも読んでいただきありがとうございます。もう9月なんですね。早いなー、ここ最近は雨が続きますね。雨の日は買い物に行くのが、おっくうなので部屋でゆっくり過ごせるように買いだめしています。

ヨンユ市場へ到着すると、ナルノは荷馬車を止めた。

アオは馬から降り、市場を見渡す。

本来なら活気に満ち、人々の笑い声や呼び込みの声であふれているはずの市場。しかし、そこは異様な静けさに包まれていた。

店先に立つ人々も、買い物客も、誰もが全身を包帯で巻かれ、まるでミイラのような姿になって立ち尽くしていた。

「一体……なんなんだこれは…」

アオは一人のミイラへ近づき、そっと手を当てた。

鼓動を確かめ、耳を澄ませる。

「……良かった…まだ息がある」

そう呟いたアオの表情が曇る。

「だけど…早く助けないと、命が危ないかもしれない……」

その言葉を聞いたナルノは、血相を変える。

「そんな…」

急いでダガーナイフを取り出し、包帯を切ろうとする。

シャッ――。

何度刃を走らせても、包帯には傷一つ付かなかった。

「どうして…切れないのよ!」

ナルノは焦りながら何度も試したが、結果は同じだった。

アオは静かに首を横へ振る。

「魔法がかけられているのかもしれない」

二人は、生き残っている人がいないか市場中を探し始めた。

果物屋、宿屋、民家、倉庫……。

一軒一軒確認していくが、見つかるのは包帯に巻かれた人ばかりだった。

そんな時だった。

コトッ……。

果物屋の奥から、小さな物音が聞こえた。

「ナルノ!」

アオは音のした方へ駆け寄る。

木箱がいくつも積まれた隅から、小さな少年が恐る恐る顔を出した。

その少年もまた、全身が色を失った『シロクロ』の姿だった。

アオは優しく微笑む。

「大丈夫だよ、すぐよくなるから」

そう言って、魔法で

「ファルベ・サウンド・ヴンダー」

柔らかな光が少年を包み込む。

失われていた声と色が少しずつ取り戻した。

けれどヨンユ市場の音と色はシロクロのまま。

オアシス周辺の一部だけが、音と色を取り戻すことができたのだ。

少年は目を大きく見開き、自分の手を見つめる。

「……!」

アオは少年と同じ目線になるようしゃがみ込み、優しく問いかける。

「何があったのか、話せる?」

少年は不思議そうに口を開いた。

「……ぅ……あ…」

小さな声が聞こえた瞬間、少年自身が驚いた。

何度も自分の喉へ手を当てる。

「声が……出る……」

そして、自分の身体に色が戻っていることにも気付いた。

安心した途端、張り詰めていた気持ちが一気にあふれ出したのだろう。

少年は声を上げて泣き始める。

「うわぁぁぁん……!」

アオは慌てることなくハンカチを取り出し、少年の涙を優しく拭くのだった。

「不安で怖いよね、でも安心して僕が話を聞いて一緒に考えるから」

少年は何度も頷きながら泣き続けた。

アオは近くにいたナルノへ振り向く。

「ナルノこの子以外には誰も見つからなかった」

ナルノは辺りを見回し、小さく頷いた。

「そうね…」

アオは少年を落ち着かせるために。

「今日は宿屋で少し休もうか」

ナルノは少年がミイラを見ると思い出すであろうと、宿屋にミイラがいないか確認して

「行きましょ」

アオは少年を優しく抱き上げ、ナルノと共に宿屋へ向かった。

宿屋の一階に三人は落ち着ける部屋へ入り、ナルノは水差しからコップへ水を注ぐ。

「ゆっくり飲むのよ、焦らなくていいから」

そう言って、水と牛乳ロールパンを少年へ差し出した。

少年は震える手でコップを持ち、一口ずつゆっくり水を飲む。

それからパンを口に運ぶ。

久しぶりの食事だったのだろう。

涙を流しながらも、夢中で食べていた。

「うぅ…おいしい……」

その小さな一言に、アオとナルノは顔を見合わせ、ほっと笑みを浮かべた。

食べ終えると、少年は安心したように大きなあくびをした。

相当疲れていたのだろう。

ベッドへ横になると、すぐに静かな寝息を立て始めた。

アオは毛布をそっと掛ける。

「ゆっくり休んでいいんだよ」

ナルノも優しく微笑んだ。

「この子、きっと一人で不安だったわよね」

アオは頷く。

「うん、今日は僕たちもここで一緒に眠ろう」

こうして二人は少年を見守りながら、その夜を宿屋で過ごすことにした。

外は静まり返り、ミイラとなった人々が眠るヨンユ市場には、不気味な静寂だけが広がっていた。

だが、その静寂の中にも、一人の少年が救われたという小さな希望の光が確かに灯っていた。

希望の物語豆知識9

リュクスの両親の名前は、母がスース、父はジャックだそうだ。

季節は6月に入り、少しずつ暖かな風が町を吹き抜けるようになってきた。

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