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「使用人風情が」と仰いましたので、本日より、雇われるのはやめます ~独立したら、お客様が順番待ちになりました~

作者:アクア
最新エピソード掲載日:2026/09/06
「使用人風情が」

ヴァルモン侯爵家の家宰補佐セラフィーヌ(三十九歳)は、二十一年ぶんの段取りを、その一言で値切られた。
怒鳴らない。泣かない。彼女は、雇われるという身分そのものを降りる。

「雇われるのは、やめます」

王都に前例のない〈請負〉を、彼女は自分で作った。
――入るのは三日。直すのは一点。指図は受けない。奥の敷居は、またがない。

最初の請負は、明後日に婚礼を控えた子爵家。使用人が七人まとめて辞めた家である。
彼女は誰も雇い直さない。婚礼の段取りのほうを、三人ぶんに組み替える。

「この家で狂っておりますのは、〈婚礼の朝の順序〉でございます」

三日目の日暮れ、彼女は出ていく。門の外で、貧乏伯爵が待っている。

「……うちの、専属になってはいただけませんか?」
「請負でございます」

こうして王都の屋敷は、順番待ちになった。
卓の隅では、断り続けている一軒からの依頼書が、名義を変えながら積み上がっていく。
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