いい匂いと青い鳥と魔法の話
最新エピソード掲載日:2026/05/08
2029年、政府はユニバーサルハイインカムを導入した。
全国民に、毎月一定のデジタルマネーが支給される。
働かなくても食べていける。
「生きるために働く」という概念が、静かにゆっくり消えていった。
同じころ、工場から車から企業から、人の姿が消えていった。
ロボットがすべての作業をする。
AIが管理する。配送も、受付も、書類の処理も。
生産コストが激減して、物の値段が下がった。
ブランド品も、高級食材も、誰でも手が届く。
物の価値が下がり、仕事は趣味に変わった。
その代わりに価値が上がったのは——体験だ。
人間にしか作れない「その場限りの瞬間」
再現できない時間。
データに残らない記憶。
それだけが、この世界でいちばん高いものになった。
「病気を治す」という考え方も、時代遅れになった。
風邪も、骨折も、癌も——今は「状態」と呼ぶ。
身体が乱れている状態。
整えればいい。
薬で押さえるより、自分の回復力を引き出す方がいい。
診断はAIが行い、手術はロボットがやる。
医療AIとロボットだけ。
医者、製薬会社、という言葉を知っている若者は少ない。
教科書で読んだことがある、昔あったらしいもの。
そういう扱いだ。
争わなくなった
政府もずいぶん小さくなった。
行政の大半をAIが代替し、法律の草案もAIが作る。
政治家の仕事は、AIが出した答えを「人間として承認するかどうか」
を決めることだけになった。
そして——人間同士も、争わなくなった。
言いたいことは、AIが要約して相手に伝えてくれる。
感情的になりそうな場面では、AIが間に入って調整してくれる。
難しいことはAIにすべてお任せ。
世界は、静かになった。
そんな世界に生きていたレンのお話。
全国民に、毎月一定のデジタルマネーが支給される。
働かなくても食べていける。
「生きるために働く」という概念が、静かにゆっくり消えていった。
同じころ、工場から車から企業から、人の姿が消えていった。
ロボットがすべての作業をする。
AIが管理する。配送も、受付も、書類の処理も。
生産コストが激減して、物の値段が下がった。
ブランド品も、高級食材も、誰でも手が届く。
物の価値が下がり、仕事は趣味に変わった。
その代わりに価値が上がったのは——体験だ。
人間にしか作れない「その場限りの瞬間」
再現できない時間。
データに残らない記憶。
それだけが、この世界でいちばん高いものになった。
「病気を治す」という考え方も、時代遅れになった。
風邪も、骨折も、癌も——今は「状態」と呼ぶ。
身体が乱れている状態。
整えればいい。
薬で押さえるより、自分の回復力を引き出す方がいい。
診断はAIが行い、手術はロボットがやる。
医療AIとロボットだけ。
医者、製薬会社、という言葉を知っている若者は少ない。
教科書で読んだことがある、昔あったらしいもの。
そういう扱いだ。
争わなくなった
政府もずいぶん小さくなった。
行政の大半をAIが代替し、法律の草案もAIが作る。
政治家の仕事は、AIが出した答えを「人間として承認するかどうか」
を決めることだけになった。
そして——人間同士も、争わなくなった。
言いたいことは、AIが要約して相手に伝えてくれる。
感情的になりそうな場面では、AIが間に入って調整してくれる。
難しいことはAIにすべてお任せ。
世界は、静かになった。
そんな世界に生きていたレンのお話。