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監督の夫が私の人脈で不倫相手を売り出したので、私は傷だらけの新人俳優をスターに育てました

短編
あらすじ
 日本アカデミー賞授賞式の壇上で、監督である夫・黒瀬悠真が、突然スピーチ原稿を破り捨てた。
 紙が裂ける音が、会場中に響いた。
 彼はマイクを受け取り、穏やかで、けれど迷いのない声で言った。
「このスピーチ原稿は、妻が書いたものです」
「ですが彼女は、今の僕の本当の気持ちを何も分かっていません」
「僕がこの最優秀監督賞を受賞できたことに対して、感謝すべき相手は、家で雑事を片づけているだけの彼女ではありません」
「僕が本当に感謝したいのは、今、僕の隣に立っているこの人です」
 そう言って、彼はわずかに身体を横へ向けた。
 その視線の先には、下腹部がわずかにふくらんだ新人女優・白石莉奈がいた。
 二人は見つめ合い、静かに微笑んだ。
「莉奈。ずっと僕のそばにいてくれて、ありがとう」
「君と堂々と一緒にいられないことだけが、僕の人生で一番の後悔です」
「それでも、僕の心の一番深い場所は、ずっと君だけのものです」
 夫の深情な告白は、生中継を通じて、一瞬で日本中に広がった。
 Xのトレンドは完全に爆発した。
 嘲笑、憶測、罵声。
 それらは波のように押し寄せ、私の身体を内側から押し潰した。
 私はその場で倒れた。
 最後まで、目を閉じることができなかった。
 次に目を開けた時。
 私は、黒瀬悠真が白石莉奈を家に連れてきた、あの夜に戻っていた。
 今度こそ、私はあっさりと離婚届に判を押した。
 三億円を受け取り、彼の家を出て、自分の個人事務所を立ち上げた。
 業界中が笑った。
 かつてのトップ女優が、夫にも仕事にも捨てられて、どこまで落ちぶれるのかと。
 けれど私は、撮影所で傷だらけになっていた若いスタント俳優と契約した。
 一年後。
 私が出資した配信ドラマは大ヒットした。
 私がこの手で育てた新人俳優は、授賞式の壇上で、私に向けて公開告白をした。
 そして元夫の会社は破産寸前となり、彼は私の前に膝をついて出資を乞うた。
 私は、新たな主演男優賞俳優となった彼の手を取り、微笑んで尋ねた。
「黒瀬監督。今の私は、まだ笑いものに見えますか?」
Nコード
N6813MI
作者名
熾星
キーワード
HJ大賞7 BWK大賞1 シリアス 女主人公 現代 群像劇 復讐劇 スカッとする話 離婚からの逆転劇 やり直し 芸能界
ジャンル
ヒューマンドラマ〔文芸〕
掲載日
2026年 06月16日 16時25分
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文字数
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