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欲しいのは毛布と君――朝焼け図書館の生徒会クーデター

作者:乾為天女
最新エピソード掲載日:2026/07/29
両親の離婚後、母の転勤で雪国の県立あすなろ高校へ転校した木崎奏。地方路線の都合で毎朝五時半に学校へ着く彼女を迎えたのは、旧図書館「黎明館」と、一枚の花柄毛布だった。

黎明館では学校司書と用務員が、始業より二時間以上早く登校する生徒たちへ、毛布、温かい麦茶、静かな机、録音図書を提供していた。利用理由は聞かない。それは家庭事情や学習上の困難を抱えた生徒が、誰にも説明せず休める場所だった。

ところが転校翌日、耐震不足と早朝勤務の管理不備を理由に、黎明館の閉鎖が発表される。しかも生徒会は、利用者への聞き取りをしないまま早朝利用終了へ同意していた。

規則を重んじる生徒会書記・相良智は、会則に基づく再審議を提案する。奏は録音図書で学ぶ一年生・海東瑚大、毛布を一枚ずつ管理する司書・斎木尚久らとともに、利用人数、必要な設備、費用、事故時の責任を調べ始める。

だが、生徒会長・鳥羽明日香にも閉鎖を支持する理由があった。さらに黎明館の解体資料を作成している県職員は、奏の母・和佳だった。

古いメッセージドームから見つかった八通の手紙。二十六年前から補修されてきた花柄毛布。誤植によって校内へ広まった「欲しいのは毛布と君」という言葉。

奏たちの目的は、危険な建物を無理に保存することではない。寒い朝に、誰も事情を問い詰められず、安心して座れる仕組みを残すことだ。

笑いと衝突を繰り返しながら、生徒たちは生徒会、学校、県教育委員会を動かしていく。
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