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十年、二番目でしたので、硝子は持って出ます

作者:優雨セレス
最新エピソード掲載日:2026/08/26
夫が病弱な幼馴染を屋敷に住まわせて、十年。

硝子師の娘だったわたくしは、あの方が生きられるように、南翼の温室の硝子を焼き替えつづけてきました。歪みを測り、厚みを揃え、毎年、帳面に日付を書いて。
夫は今年も言います。「今年も、リゼットの部屋を頼む。いつもすまない」。
客人に「奥様は今日も?」と聞かれて、夫はこう答えました。——「妻は丈夫だから」。

わかりました。もう、数えるのをやめます。
窯の火を落として、わたくしの硝子だけを持って出ます。工房も、窯も、道具も、婚姻契約書のとおりわたくしの持参財ですから。

誰も責めません。誰も裁きません。
ただ——あの温室の硝子を、これから誰が焼くのでしょう。

第1部(全30話)執筆済み・毎日更新。ハッピーエンドです。
静かに離れていく話と、腕一本で立ち直る話がお好きな方へ。恋愛はゆっくり進みます。
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