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最後の書道家

作者:ほげお
最終エピソード掲載日:2026/09/14
『最後の書道家』★全12章 完結済★
 手書きという文化が、ほとんど消え去った近未来の日本。
 行政、医療、金融、教育――社会のあらゆる場面でAIが人々の行動を支え、人生の重要な選択さえ、巨大AI〈ORION〉が「最も幸福になる可能性の高い選択」として示す時代になっていた。
 そんな世界で、黒川颯真は古びた書道教室を一人で守っている。時代遅れになった書道を、それでも手放すことができないのには理由があった。颯真は、文字には書いた人間の生き方が表れると信じている。そして筆を置く最後の瞬間には、数字や理屈だけでは捉えきれない何かが残ると考えていた。
 ある日、颯真のもとへAI研究員の白石玲が訪れる。ORIONが進める、人間の意思決定に関する研究への協力を求めるためだった。
 書道とは無縁に見えた研究が、やがて颯真の人生を大きく揺り動かしていく。
 二十年前に失った妹・紗季。
 忘れようとしても忘れることのできない過去。
 そして、長いあいだ何も書かれないまま残されていた一幅の掛け軸。
 颯真と玲が筆を重ねる中で、ORIONが突きつけてくるのは、ひとつの根源的な問いだった。
 人間の未来は、過去のデータから完全に予測できるのか。
 もし人生の選択さえAIによって最適化できるのだとしたら、人はそれでもなお、自分自身の人生を生きていると言えるのか。
 人間の苦しみを減らすことを使命とする神崎恒一は、予測によってより幸福な未来を示すことこそ、人を救う方法だと信じている。対して颯真は、失敗も後悔も含めて自分で選ぶことにこそ、人が生きる意味があると考える。
 やがて研究は、筆を置く直前の「最後の一画」という、ごく小さな揺らぎへと行き着く。
 それは単なる筆跡の誤差なのか。
 それとも、どれほど膨大なデータを集めても、完全には決めることのできない、人間自身の選択なのか。
 消えゆく書道を守る一人の書道家と、AIによって変わりゆく世界を生きる人々の物語。
 過去に縛られながら、それでも未来を自分で選ぼうとする者たちが、一枚の紙と一本の筆を通して向き合う、近未来SFミステリー。
 最後の一画に残るものを、AIは本当に予測できるのか。
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