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カボチャのジャック  作者: 北峰


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最終話 カボチャのジャック

 教会の外に出ると、いくつもの灯が夜道に揺れていた。

 首を絞められた後遺症がまだ体に残っていたため、リサは地面に倒れ込む。すると、彼女に向かって遠くから声が聞こえてきた。


「いたぞ! おーい、みんな早く来い!」


 その声につられて、灯はだんだんと多く、近くなってくる。


「リサ! 大丈夫か!?」


 覚えのありすぎる、心配げな声が鼓膜をたたく。次第に薄れてゆく視界の中に、父親の血相を変えた顔を見つけると、リサはついに意識を手放した。




 家で一日休んだ後、リサは再び教会の地下室にやってきた。

 もちろん神父の姿はここにはない。あの夜、村人たちが不審に思って教会に踏み込んだ時、すべてが発覚したのだ。今頃は町の警察に引っ張られ、しかるべき処置を受けているだろう。


 そして驚いたことに――幸いにも、カレンは一命を取りとめた。どうやら神父は彼女を一年間監禁し、ハロウィンの夜、祭壇に祀ってから殺害するつもりだったらしい。衰弱は激しいが、病院に何日か入院すればまた元気を取り戻すだろう。


 あの日、夜中に娘が家を抜け出したことを知った両親は、去年のことを思い出して強い不安に襲われたようだ。それで村人たちが総出で探しているところ、教会から出てきたリサを発見した。


 本来なら娘に大目玉を食らわせるところなのだが、あまりに凄惨な事件を目の当たりにした両親は、何も言えずにいた。




 カツン、カツン、と靴音を響かせながら、リサは室内を眺め渡した。日の入らない地下室は、昼でも暗くじめじめしている。その中で、警官たちが事件の証拠品を押収するために右往左往していた。


「あの……ここにカボチャはありませんでしたか?」


 事件のことを聞かれる前に、リサは一番気になっていたことを尋ねた。しかし、訊かれた警官は不思議そうな顔をした。


「いや、この地下室にはなかったよ。上の礼拝室には山ほどあったがね」

「そう……ですか」


 納得のいかないリサの様子には構わず、警官は彼女への質問と、そして判明した真相を話してくれた。


 神父はやはり、一年に一人ずつあの祭壇に祀っては、髑髏のランタンに変えていたらしい。首から下の骨は、教会の裏庭から大量に見つかったという。


 もちろん村の子供ではすぐに大騒ぎになるので、「材料」は町から調達してきた。町なら浮浪児も多く、消えたところで誰も気づかない。そして攫ってきた子供は何と、ハロウィン用のカボチャを積んだ荷車に隠して運び込んできたのだそうだ。


 神父が、「今年のハロウィンが取りやめになって困っていた」と言っていたのは、恐らくそのためだろう。祭りがなければ、大量のカボチャにまぎれさせて子供を運び込むことができなくなる。つまりは、去年から歯車が狂い始めていたということなのだろう。


 去年のハロウィン、カレンは子供たちのグループからはぐれ、この教会に入り込んだ。


 寂しさのせいだったろうか。

 教会に来れば慰められると思ったのだろうか。


 しかし、そこで凄惨な現場を目撃し――彼女は翌年のハロウィンまで閉じ込められることになった。また一つ、新たなランタンの材料とするために。


 リサは、再び室内をぐるりと眺め回した。中に蝋燭を差し込んだ、髑髏のランタン。危うく自分も同じ姿にされるところだったのかと思うと、彼女はぞくりと寒気を覚えた。


 その時。

 ふと、彼女の視線は床の隅で止まった。

 そこには、一つの髑髏がバラバラに砕けて転がっていたのだ。


「これは……?」

「ああ、落ちた衝撃で割れたんだろうな。おいそこ、大事な証拠なんだから破片を踏むなよ」


 警官は、捜査中の若い部下を叱咤する。それだけ、その頭蓋骨は細かく砕けていたのだ。


 しかし警官の太い声を聞きながら、リサはあることに気づいていた。

 これほど多くの髑髏のランタンがある中で、その頭蓋骨だけは蝋燭が差し込まれていなかったことに。


 それに、この砕け方。強い衝撃を受けたらしい跡は、どう見ても落ちて割れただけとは思えない。


 ――子供の頭ほどの大きさの、あのカボチャ。


 いや、正確にはカボチャ型の妖精。

 彼はリサを救った後、姿を消した。そして、その跡には砕けた髑髏が一つ。


「ジャック……」


 身寄りのない町の子供なら、いくら調べても身元は判明しないだろう。哀れな彼らの中に、その名があるかどうかはわからない。それでも、リサは確信していた。


 ――ハロウィンの夜には、死者の魂が訪れる。


 カボチャに宿った魂が、彼女をここへ導き、そして救ったのだと。


「ありがとう、ジャック」


 十一月第二日。

 万聖節の明くる日は、死者の日と呼ばれる。

 目を閉じ、死せる魂に祈りを捧げ、少女は静かにその場を去った。

以上で完結となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

こちらは以前に書いた作品をハロウィン前の期間中に公開したものです。

少しでもお楽しみいただけましたら、是非☆にて評価をお願いいたします。

それでは、ハッピー・ハロウィン!!

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― 新着の感想 ―
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