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友情と呼ぶには、足りなくて

作者:久遠 睦
最新エピソード掲載日:2026/08/12
三十六歳の水口真尋は、営業企画課の課長として働いている。一人で旅をし、一人で暮らし、誰にも頼らないことを強さだと思ってきた。五年前、結婚を望んだ恋人と別れてからは、誰かと近づくこと自体を避けている。

 秋田の紅葉の下で写真を頼まれたのは、十一歳年下の小野寺葵だった。恋人からの連絡が減っていく理由を確かめられないまま、一人旅に出てきたのだという。

 東京へ戻った二人の生活は、それぞれの速度で動き出す。葵は恋人と別れ、仕事で自分の言葉を通せるようになっていく。真尋は避けていた人とやり直し、恋人を持ち、大阪への転勤を選ぶ。会う回数は減り、互いの知らない時間が増えていく。

 それでも、大きなことを決める前には相手の顔が浮かぶ。必要とされていなくても、会いたいと思う。

 恋人ではない。家族でもない。友情という言葉にも収まらない。二人はその関係を何度も言葉にしようとして、そのたびに足りないものを見つける。

 五年後、二人はもう一度、出会った場所へ向かう。関係に名前をつけるためではなく、名前がなくても続くことを確かめるために。
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