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ritard. ――リタルダンド――   作者: 花厳 幽花
復讐の影編 第5章「再会を夢見て」

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4「重なる再会」

 最も早くクレーターに到着したのは、エロメロだった。遠くから警備隊のものであろうサイレンが聞こえ、上空には報道陣のヘリが飛んでいる。


 雨が降っていると言うのに、どこもかしこも騒がしい。


 エロメロはヘリの方を睨み付けた。その瞬間、ヘリが突如として進行方向を変え、クレーターから遠ざかっていった。

 すると警備隊の車両が幾つも現れる。


 舌打ちをしたエロメロは一刻も早く、彼女の兄である『破壊神』ザンシを見つけるべくクレーターの中へと降りて行った。


 シンフォニ王国の第三地区全域を吹き飛ばしたのだから、クレーターの規模は途轍もない。


 エロメロはクレーターの中を進んでいく中で、ふと、とある布切れを見つけた。それを手に取る。


「そんな・・・」


 瞬間、エロメロは膝から崩れ落ちた。これはザンシが着ていた服の布切れだった。

 つまりザンシは――。


「お兄さま・・・!!!」


 エロメロは目に涙を浮かべ、喉が焼き切れそうなほど大きな声で叫んだ。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 適当に捕まえたタクシーに乗って第三地区までやってきたルノートとリオティナ。

 警備隊の隊員がクレーターの前に集まる野次馬たちの対応をしていた。クレーター近くに止められた幾つもの警備隊員の車両が目に入る。


 雨が酷いというのに、傘を差している者は少ない。


「あちゃあ、警備隊の連中に野次馬までいやがるな」


 リオティナが面倒くさそうに溜め息を吐く。


「ったく、これじゃクレーターにまで行けねぇな」


 リオティナは頭を掻きながら言うと、ふと、隣に立っていたルノートのもっと向こうを見て目を見開いた。

 彼女の動きが固まったので、ルノートは気になり、リオティナが目を向ける方向を確認した。


 そこには――。


 狐の女と、赤い髪の――間違いない、ドミナだ。ドミナがそこにいた。


 彼女と目が合う。その瞬間、ドミナはルノートの元へ駆け寄って来た。


「ドミナ、ちょっと待つのじゃ」


 狐の女がドミナを呼び止める。しかし、ドミナは止まることなくルノートの側へやって来る。

 ドミナが傘を捨てて、ぎゅっと飛び付くように抱き着く。

 何も言わずにただ彼女は小さく震えている。ルノートはそんな彼女の背中へ手を回す。


「ドミナ、いや、まさか・・・本当に、ドミナなのか・・・」


 リオティナが近くで小さく言う。


 しかし、ドミナの耳に彼女の言葉は届いていなかった。

 ルノートとドミナは雨に打たれながら、互いの体温をただ感じている。


 この世界にいるのはドミナとルノートだけ。そう錯覚するほど、ハグの時間は長かった。


 しばらくの間抱き合って、ドミナが離れる。彼女はルノートを見つめる。ルノートもまた彼女を見つめる。


 視線が交わされる時、雨が少しだけ弱くなった。


 野次馬とその対応に追われる警備隊員の騒がしい声も、ヴェイラの呼び止める声も、リオティナの呟く声も、何も聞こえない。


 あるのは二人の飛ばす視線だけ。言葉にせずとも二人の意思は通じ合っていて、互いに顔を見合わせて、そしてゆっくりと口付けをした。


 口付けが終わる。


「ドミナ・・・」

「ルノート・・・」


 名前を呼び合う二人は、二人にしか感じられない独特の心地良さに包まれた。


「お前がもう一人でも大丈夫だってことくらい、私は知ってる。それでも、私は結局、お前に会いたくなってしまう」


 ドミナが言いながら、またルノートの体へ抱き着く。


「とある方が私の『魂』に眠っている『てぃーく』? とやらの意識を消してくれたんだ。だから、無事にこうしてお前と会える」

「それは本当なの?」

「ああ」


 するとルノートが力強くドミナを抱き返した。それに驚いて、ドミナが小さく「わっ」と声を上げる。


「良かった・・・」


 ルノートが震えている。彼の震えに気付いたドミナは、優しく彼の背中を撫でた。


「本当に、良かった・・・!!」


 周りの目など気にせず、ルノートは大声を上げて泣き始めた。


「ルノートは私のために一人になったんだよな。魂とかそういう訳の分からないことに縛られて」


 ドミナはルノートの頭を撫でる。背はドミナの方が高い。ルノートはまだ十三歳なのだ。


「もう大丈夫だから」


 ドミナは言いながら、ふと、頭の中にロクリアの姿がちらついた。途端に胸の中へちりちりと擦れるような痛みが走る。それを感じながらもドミナは我慢して、ただただルノートの背中を撫で続ける。


 しばらくしてルノートが落ち着く。彼は泣き腫らした目をドミナへ向けている。


「なぁ」


 ドミナは話を切り出す。


「私たち、もう一回やり直さないか」


 ドミナは酷く真剣な目をしていた。ルノートは彼女の目を見て、


「僕は君を一度振った挙句に、新しく恋人を作った。君を二度振ったみたいなものなんだ。そんな最低な僕が、今更君と付き合うなんてできないよ」

「最低とか、それを言うならあたしもだ。お前が一人になった理由を知らずに執着して・・・」


 するとルノートが体を離した。彼はまた一人になろうとしている。それを知ったドミナが、彼の腕を掴んだ。


「待て。ちなみに、お前の新しい恋人の変な女はどうしたんだ」

「殺した」


 ルノートは間を置かずに答えた。ドミナは戸惑うも、


「そうか。でも、ちゃんと理由があってのことだもんな」

「うん。殺してと言われたから」


 彼は淡々と答える。


「じゃあ私が殺してと言ったら、お前は私を殺してくれるのか」

「うん」

「じゃあ、私が死ねと言ったらお前は死ぬのか」

「そうだよ」

「じゃあ、私と死んでと言ったらお前は私と死んでくれるのか」

「もちろん」


 彼の答えを聞いた途端、ドミナは薄く笑みを浮かべた。


「ああ、やっぱりそれでこそルノートだ。なあ、ルノート、やっぱり私たちやり直すべきだ。私たちは私たちで手を組み合って生きるしかない。傍から見たら私たちは『異常』なんだ。だから、な」


 ドミナは力強くルノートの体を引き寄せる。

 ルノートは困ったように眉を垂れさせて、ゆっくりと、確かに頷いた。


「分かった。君の魂からあの意識とやらが消えたから、一人になる理由もないしね」


「なにより」とルノートは言葉を続ける。


「僕はもう一人になりたくない。どんな時も、ドミナのことが頭を離れなかった。そう、どんな時も」


 ルノートの台詞を聞いたドミナが満足げににっこりと笑みを浮かべた。


「決まりだな!」


 ドミナはそう言ってもう一度ルノートを抱きしめた。ルノートも優しく抱き返してくれる。


「はぁ、全くいつまでくっついているのじゃ」

「ヴェ、ヴェイラさん! こ、これはその・・・」


 ドミナが慌てて説明をしようと口を開く。


 その前に――。


「ドミナ、やっぱりそうだな」


 と、リオティナが口を挟んだ。彼女はドミナを見据えている。


「えっと、誰?」

「あたしはリオティナ・ローズブレイド。そうだな、オマエの家族。ああ、姉と言った方が分かりやすいか」


 ドミナは目を見開いた。


「私の、家族・・・」


 ただその一言が、野次馬の騒音に溶けるように散って行った。

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― 新着の感想 ―
読了しました!! ドミナとルノートの再会!! そして、復縁! 今回は盛り沢山の素晴らしい回でしたね(*´∀`*) 最高でした!! ドミナも驚愕するリオティナの存在……! 次回も楽しみにしております(…
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