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夫が私に贈ったのは980円のバラ。それなのに、初恋の彼女には家をプレゼントしていた

短編
あらすじ
 結婚三年目の記念日。夫の黒瀬航平がくれたのは、今年も送料込み980円の小さなバラの花束だった。

 通販で買った花束は、包装紙にしわが寄り、花びらの縁も少し傷んでいた。

「千春、ごめんな。今、会社が厳しくてさ。落ち着いたら、ちゃんと埋め合わせするから」

 私は傷んだ花びらを取り除き、リビングの花瓶に生けた。

 その後、会社の資金繰りを助けるために、母が遺した花屋まで売った。二十年以上続いた店で、私が母から相続した唯一の不動産だった。

 藤崎莉央の帰国祝いが開かれたのは、それからしばらく経った頃だ。

 酔いの回った莉央が、友人たちに囲まれて笑っていた。

「航平がね、ご両親の家を譲ってくれたの。あそこを私のスタジオにするつもり」

 周囲から羨ましがる声が上がった。

 その家には、私も行ったことがある。

 航平が私の手を引いて庭へ出て、会社が落ち着いたら改装しようと話していた家だ。

「いつか、ここで一緒に暮らそう」

 あの日、彼はそう言った。

 少し離れた場所から航平を見ると、グラスを手に莉央の話を聞いていた。否定する様子はない。

 その夜、私はもう家のことを尋ねなかった。

 あの家も、航平も。

 もう、私にはいらない。
Nコード
N7246MX
作者名
熾星
キーワード
シリアス 女主人公 現代 女性向け 夫婦関係 裏切り 復縁なし 自立する女性
ジャンル
ヒューマンドラマ〔文芸〕
掲載日
2026年 10月25日 15時00分
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総合評価
762pt
評価ポイント
724pt
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文字数
14,816文字
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