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財閥御曹司の愛人に離婚を迫られましたが、私は彼の継母です

短編
あらすじ
 午前三時。港区の上流圏に、とんでもないゴシップが流れた。

 見出しはやけに刺さるものだった――《神崎家の跡取り、六本木の会員制ラウンジでインフルエンサーの誕生日を祝う。正妻は深夜に避妊具を届けたか》。

 私は画像を開き、そのまま靴を履いた。こんな大ネタを目の前にぶら下げられて、見に行かない理由がない。午前三時の東京に失礼というものだ。

 写真の女は、たしかに目を引いた。オートクチュールのドレスをまとい、フロアの中央で水蛇みたいに身をくねらせている。周りでは二世の坊ちゃんたちがグラスを掲げ、面白がってはやし立てていた。

 私はバーカウンターでロングアイランド・アイスティーを頼み、静かに見物するつもりで腰を下ろした。ところが彼女は赤ワインのグラスを手に、まっすぐこちらへ歩いてきた。

「あなたが佳奈さん? 藤堂家が地方から見つけ出した、本当の娘さんなんですってね。蓮司さんに頼まれて、あれを届けに来たんでしょう? 品物は? どうしてここでお酒なんか飲んでいるの?」

 私は一瞬、反応が遅れた。人違いだと手を振ろうとした瞬間、彼女はいきなり私の手首をつかみ、そのまま自分から床へ崩れ落ちた。

 がつん、と乾いた音がした。彼女の腕につけられていたパテックフィリップの文字盤がテーブルの角にぶつかり、見事にひび割れる。

 顔を上げた彼女の目には、もう涙が浮かんでいた。ラウンジの照明より早い演技だった。

「佳奈さん……私のことが気に入らないのはわかっています。でも、どうして時計まで壊すんですか。蓮司さんが誕生日のために、わざわざスイスから取り寄せてくれたものなのに。どうしても私が邪魔なら、私が身を引きます」

 あまりの展開に、私は言葉を失った。手元のグラスから酒がこぼれ、床に広がる。

 深夜に避妊具を届けに来た、哀れな正妻?

 冗談じゃない。

 私は昨日、日本有数の財閥会長、神崎清隆と入籍したばかりだ。立場でいえば、神崎蓮司の継母である。
Nコード
N0689ML
作者名
熾星
キーワード
BK小説大賞2 シリアス 女主人公 現代 ざまぁ スカッと 不倫 毒親
ジャンル
ヒューマンドラマ〔文芸〕
掲載日
2026年 07月07日 17時00分
最終更新日
2026年 07月09日 10時08分
感想
1件
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総合評価
212pt
評価ポイント
196pt
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文字数
13,489文字
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