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社交界の調停屋

作者:ゆい
最新エピソード掲載日:2026/05/27
 まばゆいシャンデリアの光に照らされ、美しい演奏を背に華やかに踊る男女。女はむせるような高級香水を纏い、美しいドレスと本物の宝石で己を飾る。その笑顔の裏では、ネチネチとした針の刺し合いをする。男は上等な酒と煙草の香りを漂わせ、紳士的な笑みを浮かべる。だがその実態は、地位と権力に酔った獣だ。穏やかな声で相手を褒めながら、その裏では誰を切り捨て、誰を利用するかばかり考えている。

 社交界――それは煌びやかな衣装をまとった人形たちが、お互いの喉元に笑顔のナイフを突きつけ合う戦場だ。

 そんな戦場の中に1人だけ異色な者がいた。

 その名はヴィオレッタ・クローヴィス。

 古くから続く格式高いクローヴィス伯爵家の唯一のご令嬢で、氷のような美しさと笑みを一切浮かべないことから、社交界では“氷の令嬢”として有名だ。

 しかし、これは表の顔である。

 彼女には裏の顔があった。

 婚約破棄、愛人問題、スキャンダル、失踪事件、家同士の対立――。

 金と秘密が渦巻く社交界で、どんなことでも金さえ払えば彼女は依頼を受け、完璧にこなす。彼女にとって正しさとは無意味で、金と人脈さえ手に入れれば誰の味方でもする。そんな裏の顔を知っている者は彼女のことをこう呼んだ。

 社交界の調停屋――と。

 そんな彼女の元に今宵もまた1人、客が訪れる。

 これは欲に塗れた社交界の調停屋の物語だ。
微笑みの貴公子
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