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はじめまして!
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本日の舞台は夜会であった。
夜会とは嫌になる程面倒だ。笑いたくもない相手に笑い、興味もない話に耳を傾け、腹の底では互いを探り合う。優雅な音楽が流れていようと、結局ここは欲望の巣窟でしかない。
――まぁ、それは夜会に限らないけどね
心の中でそう冷ややかに呟いたヴィオレッタは、華やかな香水や葉巻の煙が混じった匂いと、煌びやかな衣装を身に纏う人形達に飽き飽きとして、主催者や知り合いへの挨拶もそこそこに月光に照らされたテラスで一人、夜風にあたっていた。
そんな彼女の元に一人の男が訪れた。
名はアシュレイ・アルヴェイン。
王家に次ぐ権力を持ち、代々この国の外交を担ってきたアルヴェイン公爵家。社交界の中心には常にアルヴェインの名があった。そんなアルヴェイン家の次期当主として名高いのが彼である。
常に笑顔であり、何をさせても完璧にこなすことから社交界では“微笑みの貴公子”と呼ばれている。彼が歩く度に、数多の令嬢が「アシュレイ様って本当に素敵……」だの、「誠実で優しくて完璧よね」だのと、頬を赤くしてしまうほどの人気者である。
だがヴィオレッタからすれば、アシュレイほど“優雅な仮面”が似合う人間はいなかった。まさに、アルヴェインの家訓である「常いかなる時も優雅であれ。誰にも感情を悟らせるな」を、そのまま人の形にしたような男だ。彼は、誰もが見惚れる美貌を持ち、常に穏やかでありながらも、一切の隙を見せない。
正直、心の奥底が読めないこの男はやりにくい。
それでもアシュレイは、そんなヴィオレッタの本心など気づいていないかのように完璧な笑みを浮かべたまま、優雅な足取りで彼女の隣へ歩み寄る。月光に照らされたアシュレイの銀髪は淡く輝き、まるで絵画から抜け出してきたような美しさだった。
アシュレイは緩やかに目を細めながら、静かに声を掛けた。
「こんばんは、ヴィオレッタ嬢」
「ごきげんよう、アシュレイ様」
ヴィオレッタもまた、ドレスの裾を摘み優雅に一礼をした。美男美女が優雅に挨拶を交わしている様は、まさに美しい絵画のような光景であろう。
だが――。
「――今宵のワルツは、少々息苦しい」
アシュレイは表情を変えず、優雅な笑みを浮かべたままそう言った。その言葉に、ヴィオレッタは扇子を開き口元を隠す。そして、彼女は扇子越しに彼を見上げ、来たか――と、心の中で小さく息を吐く。
「でしたら、少し静かな場所へ参りましょう」
それが、“依頼”を意味する合図だ。
――さぁ、社交界の調停屋の時間の幕開けだ。
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