↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛する機会を与えよう  作者: 大貴古川
小林憂海の後悔と償いの物語

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/3

第2話 愛する機会①の受け取り

 受けとった紙をよく見てみると、下の方に小さく真っ赤な文字をみつけた。

 

『最大の幸せを感じた時、記憶が戻るでしょう』


 憂海(うみ)は確かめるように小声で、それを読み上げた。

 真っ赤な文字と、その内容に気味の悪さを感じ後ずさる。

 そして紙から、女性に視線を移した。


「えっ……と。大丈夫……?」

「うーん。どうすればいいかわかんないけど、なんだか気持ちは晴れてるんだー」

「そんな前向きな記憶喪失はじめて見た。……いや、てかそもそも記憶喪失の人を見るのがはじめてだわ」

「ふふふ。お兄さん良い人っぽいね」


 自分の発言に自分でツッコミを入れる憂海をみて、女性は探るような目を向ける。


「……いや、俺は全く良い人じゃないよ」

 下唇を噛んで目を伏せた。


「じゃあ、私のこと助けてくれないの?」

「いや……。そんなことは……むしろ……」

 助けたい。救いたい。


 その欲望が頭を過(よぎ)った時、ふと直前にあった出来事を思い出す。——口元に大きな痣(あざ)のある『作者』だと名乗った人物の言葉を。


『強い欲望を得ましたね』

『願いを叶えてあげる』


 ゴクリと音を立てて唾を飲み込んだ。


 あの時、憂海が強く感じた欲望は……。

 ——誰かを救いたい。助けたい。そして、幸せにしたい。


 直前のそのやりとりから考えて今のこの状況は、偶然にしてはお誂(あつら)向き過ぎる。

 さらに『作者』という言葉が引っ掛かる。

 信じがたいが……もしかして、神のような存在なのだろうか。


 頭の中に浮かぶ疑問を整理するために沈黙している憂海に、女性は続きを促(うなが)すように話しかける。


「むしろ……? なに?」

「……助けたい。君の事を、俺に助けさせて欲しい」


 過(あやま)ちを償うために、自分の命を誰かのために費やしたいと願った憂海。

 強く決心をした。目の前の女性を救う決心をした。

——『作者』から【愛する機会】を受け取った。


「ぜひお願いしますっ!」

 女性は弾むような明るい声で応えると、憂海の頬(ほお)が僅(わず)かに上がった。


「記憶喪失って……えっと……。なんにも覚えてない……の?」

「なんだかね、名前だけは覚えてるんだぁ。恵(めぐみ)っていうの。……あっ苗字は覚えてない」

 人差し指を伸ばして空中に書きながら伝え、最後に腕を交差させてバツを作った。


「恵……さん、ね。よろしく。俺は小林憂海っていうよ」

「恵で! 呼び捨てでいいよ、憂海くん。多分私のが歳下だしね」

「わかった。俺も呼び捨てでいいよ」

「オッケー! 憂海! よろしく!」

 

 恵は勢いよく立ち上がり、右手を差し出して握手を求めた。

 それに応じて強く手を握って決意を固める。——救う決意を。


「記憶喪失したとは思えないくらい、ほんとに明るいな」

「だって憂海が助けてくれるんでしょ?」

「……そうだな」

 整った顔で微笑みながら、上目遣いを向けられ、憂海は目を逸(そ)らす。心拍数が少し上がるのを感じた。


 ところで、と恵が切り出す。

「さっきのってどういう意味?」

「さっきの?」

「『全く良い人じゃないよ』って言ってたやつ。……なんか悪さしたの?」

 憂海の心拍は、先とは違った意味で速くなる。


「……そうだな。それはちゃんと話しておかなきゃいけないな」

 

 大きく肩を上下させて、肺の空気を入れ替えるそして恵の目を真っ直ぐに見つめた。


「俺は……五年前に取り返しのつかない事をしてしまったんだ」


 憂海は重々しく、悲愴感を乗せながら語り始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
読了しました!! 二人の物語の中に神様のような「作者」という存在がいて、強く意志を抱けば叶えさせてもらえる?ということなんですかね?? そして記憶喪失に、5年前の取り返しのつかないこと……謎は深まる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。