鬼と姫君~平安異形絵巻~
長宝三年一月。
故常陸宮の娘である綾女は、右京の寂びれた邸で、世話役の命婦と共にひっそりと――否、ある意味にぎやかに暮らしていた。
というのも。
「綾女どのー! いい加減、主様と結婚してくだされ!」
もふもふの綿毛のような狐の妖が、毎日毎日突撃してきては、そんな意味のわからないことを言うからだ。
綿毛のような狐「綿星」との付き合いは、綾女が内裏を追い出され右京の邸に移ってからもう六年も続いていた。
この妖は、自分の主である鬼の紫苑の嫁になれと、毎度毎度迫って来るのである。
鬼と結婚なんてしないと突っぱねつつも、鬼からの貢ぎ物でどうにか生活を食いつないでいる綾女は、どうしたものかと考える。
実は鬼との結婚は、父が生きていたころに勝手に鬼と約束を交わしてしまったことなのだ。つまり綾女は鬼、紫苑の許嫁なのである。
人外のものと結婚なんてしたくない。
そう思う綾女だったが、ある日、「だいたいねえ、よく考えて見なさいよ。結婚結婚いうけど、その紫苑とか言う鬼から、文の一通だってもらってないわよ! まずは文通からはじめるのが常識でしょう!」と口走ってしまったがために風向きが変わってしまった。
そう口走ってしまったすぐあとに紫苑から文が届いてしまったのだ。
そして、仕方なく文を返信すれば、なんと、紫苑が夜に訪ねてきて――
なんでこうなったの⁉
落ちぶれた姫君と鬼との運命が、今、交差していく……
※書籍化、コミカライズ、決定しております。詳細はご報告できる段階になったらいたしますね(*^^*)
故常陸宮の娘である綾女は、右京の寂びれた邸で、世話役の命婦と共にひっそりと――否、ある意味にぎやかに暮らしていた。
というのも。
「綾女どのー! いい加減、主様と結婚してくだされ!」
もふもふの綿毛のような狐の妖が、毎日毎日突撃してきては、そんな意味のわからないことを言うからだ。
綿毛のような狐「綿星」との付き合いは、綾女が内裏を追い出され右京の邸に移ってからもう六年も続いていた。
この妖は、自分の主である鬼の紫苑の嫁になれと、毎度毎度迫って来るのである。
鬼と結婚なんてしないと突っぱねつつも、鬼からの貢ぎ物でどうにか生活を食いつないでいる綾女は、どうしたものかと考える。
実は鬼との結婚は、父が生きていたころに勝手に鬼と約束を交わしてしまったことなのだ。つまり綾女は鬼、紫苑の許嫁なのである。
人外のものと結婚なんてしたくない。
そう思う綾女だったが、ある日、「だいたいねえ、よく考えて見なさいよ。結婚結婚いうけど、その紫苑とか言う鬼から、文の一通だってもらってないわよ! まずは文通からはじめるのが常識でしょう!」と口走ってしまったがために風向きが変わってしまった。
そう口走ってしまったすぐあとに紫苑から文が届いてしまったのだ。
そして、仕方なく文を返信すれば、なんと、紫苑が夜に訪ねてきて――
なんでこうなったの⁉
落ちぶれた姫君と鬼との運命が、今、交差していく……
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