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ライオン岬

作者:茂村 拓時
最新エピソード掲載日:2025/09/15
黒潮洗う南海の離島。小学六年生のヤスノリは農業を営む両親と島の駐在の息子で、同じ年のいとこのミツアキ家族らと共に暮らしていたが、早、卒業式を迎える。
卒業式を終えて教室に戻ると、同じ中学校に通えるはずと思っていた初恋の相手ハナがこの春から神戸に転校してゆくことを知らされる。
ヤスノリは小学校の卒業記念とハナが転校してゆくという事実を知った悲しみを振り払おうと島の南の果てのライオン岬まで自転車で遠乗りしようとミツアキを誘った。ライオン岬の先端には、「行者の岩屋」と呼ばれる洞窟があり、そこへ行くのは学校で禁じられていたが、その禁を犯すことで卒業の記念とするつもりだった。遠乗りにはミツアキの二人の弟ヒロシとマサルも加わり、地図や磁石、ローソクなどを持ち寄って、四人の少年たちは洞窟探検に出かける。
 洞窟の果ては、浸食で太平洋に向かって穴の開いた小さな浜になっていた。そこで少年たちは行者の石像の後ろに置かれていた小さな木箱から、昔、少年だったヤスノリの父が少女だった母に告白の決意を綴った置き手紙を見つける。その手紙には、「冒険心を持ってここまできた者には、この手紙を読まれても構わない」と書かれていたが、ふとしたことから、ミツアキがお守り代わりにハナからの年賀状を持って来ていたことを知る。ヤスノリにはハナからの年賀状は来ておらず、ここで初めて失恋を知る。
 その場の空気を変えようと、ミツアキが持って来た紙コップで流し灯篭を作り、浜に浮かべる。灯篭の後を追って洞窟の外の海に出てみると目の前の海にサンゴの群生を発見する。
 この島には意味不明な「呪文」が伝わっていたが、その文言がこのライオン岬の海に桃色サンゴがあることを示す暗号であることにヤスノリたちは気づく。
 帰りの道で夕日を眺めるために立ち止まると、卒業文集に「呪文」の文言を書いたヤスノリは自分も文集にこの島にサンゴがあることを示す暗号を残していたことに気づく。
 帰宅するとヤスノリの両親はロウソク立てやリュックが無くなっていたことから、少年たちが洞窟探検に出かけたことに気付いていた。ヤスノリの父は、少年たちが岩屋に辿り着き、昔、自分が書いた置き手紙を読んだことを悟り、遠乗りの成功とこの春からの中学進学を、それまで開けずに大切に保存していたワインを開けて祝福するの
だった。                 
 (了)

卒業式
2025/09/15 20:56
行者の岩屋
2025/09/15 20:57
水床島の秘密
2025/09/15 20:58
家路
2025/09/15 20:58
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