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土の匂い スピンオフ 浩二編

作者:畑野春樹
最新エピソード掲載日:2026/11/03
父親を幼くして亡くした浩二は、母と二人の弟とともに暮らしていた。母は三人の息子を育てるため、朝早くから朝市に出かけ、畑仕事や家事に追われる毎日。浩二も時には手伝いをしたが、母の役に立てる嬉しさの一方で、友達にその姿を見られるのは恥ずかしかった。

小学三年生の秋、学校で先生から「お父さんがいない人、手を挙げて」と言われる。みんなの前で手を挙げることができず、涙をこらえた。休み時間には友達から父親のことを尋ねられ、とうとう泣いてしまう。帰り道、父ちゃんがいたら母ちゃんはあんなに働かなくて済んだのに、朝市の手伝いもしなくてよかったのに、と考える。友達のように遊び、欲しいものをねだってみたい。そんな気持ちを抱えながらも、母を悲しませたくなくて、家では「何でもない」と答える。

子ども時代の浩二には、寂しさや悔しさだけでなく、弟たちとのふざけ合いや友達との遊び、母に叱られてふてくされる日もあった。母を助けたい気持ちと、手伝いを嫌がる気持ち。感謝とわがまま。そんな相反する思いを抱えながら、少しずつ成長していく。

やがて故郷を離れ、自分の人生を歩み始めた浩二は、母がどれほどの思いで自分たちを育ててくれたのかを知るようになる。近所の人々から受けた何気ない親切にも、時を経て気づいていく。

父親がいない寂しさは消えない。それでも、母の愛情や弟たちとの日々、周囲の人々の支えが、自分の人生をつくってくれた。かつて母の手伝いを恥ずかしいと思った少年は、今、母への感謝を胸に抱いている。

ひとりの少年が、寂しさや悔しさ、喜びを重ねながら成長し、人の優しさに気づいていく物語。
手を挙げた日
2026/11/01 17:24
迎えを待つ夜
2026/11/01 18:01
背中が痛い
2026/11/02 07:13
山の境界線
2026/11/03 02:39
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