薄霧。
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―――南方に熱が散発的に視えてくる。
そして、それに伴うかのように自軍の電信が届いた。
「コチラ追撃隊。間モナク、所定位置ニ辿リ着ク。」
その知らせを聞いた指揮官は全体に対して号令をかけて最終の進軍準備を取らせる。
樺隊もまた、いつでも進軍できるよう準備を整えたうえで観測を行うことにした。
不意打ちにより少しでも戦力を削ぐため、或いは負傷者を増やすことで撤退の速さを遅らせるために。
熱は近づいてくる。疎らな点だった熱は次第に具体的な塊となる。
そして時は来た。
雷徳遠は撤退を行っている。距離は意図的に離れたのかは定かではないが遠い。されどまだ射程圏内である。
見逃しはしない。
そう思った矢先。
樺は異変を視た。
「総員!!身を隠してください!!”熱”が来ます!!」
そう言い切るや否や。
樺の頭上を熱が空間を塗りつぶしていた。
…幸いにも隊員らは身を隠せたようで被害は出なかった。
が熱がまだ残留している。
これでは銃撃はできない。
そう判断した樺は、計画の通り指揮官の隊と共に追撃隊に合流を行うことにした。
光の失われつつある夕方の話である。
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合流を行なって数時間後。
…案の定というべきか、むしろそうでない筈がないのだが、雷徳遠の隊は遅い。がそれでもなかなかに追いつけない。
広い範囲に撒く熱は即死には至らないものの体力を確実に奪いに来るし、時折火球が来る。
しかし、対策は取れる。
撒かれた熱は通る地点だけ自隊の熱魔法使いで冷やして通ればよい。
火球は鬼熊が受け、それによって熱された箇所は熱魔法を使う兵士によって冷却されることになっている。
そして、広範囲に高温の熱を放つことは移動中であることや、熱を集める必要があるため、難しいだろうと判断されている。それに、不測の事態の為に天津も控えている。
樺はただ、それらを円滑に回すため、歩みながら観測を続ける。観測さえ適切に行えば、犠牲を出さずに奴らを追いやれるのだ。
雷徳遠の変わらぬ背、体力切れで徐々に欠けていく両軍の兵士、変わらぬ道。
進めど進めど変わらぬ追撃戦。
その道中で樺は異変を覚えた。
霧が進軍の始まりに比べてやけに薄くなっているのだ。
かつて100m程度しか視えなかった白世界が数km先も視えるようになってきた。
が、それはおかしいと感じる。
大気の停滞した地域であれば、気温の下がる夜は寧ろ霧が濃くなるのが自然な筈だ。
…それに今朝の肌寒さの気配もなく、寧ろ少し暑く感じている。
まだ、何かを狙っているのだろう。
…樺の意識はふと、撤退をしている敵将に向いたのであった。




