代行
最新エピソード掲載日:2026/11/02
「四百メートル。誰も見てない」――運転代行の遠山は、その夜十一本目の仕事で、篠原建設の専務・篠原航に一万円札を胸ポケットへ差し込まれ、坂の下でハンドルを譲った。直後、航の運転する車が、交差点で無灯火の自転車をはねた。倒れた若い男は、手を取った遠山に「すみません」とだけ言った。「あんたが運転してたことにしてくれ。俺、飲んでる」。すがる航を助手席へ追いやり、遠山は運転席に座って119を押した。航の父が用意したのは、弁護士と二千万。滞っていた娘の学費は、その金で払えた。だが取調べにあたる交通課の巡査部長・堀は、所持品の一万円に目を留める。そして被害者の母親は、示談の前に運転手の顔を見たいと言い出した。