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代行  作者: 久賀ラトル


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2/8

二

 宮下悠斗、二十一歳。物流倉庫の夜勤に向かう途中だった。翌朝、病院で死んだ。


 遠山は二日で出た。ローカルニュースは「代行運転中の男(46)を逮捕」と実名で流し、遠山の勤めていた代行会社はその日のうちに電話をよこして、もう来なくていいと言った。


 取調べは堀という交通課の巡査部長だった。五十過ぎで、ワイシャツの袖口が黒ずんでいた。


「ライトは点いてなかった。それはいい。自転車の兄ちゃんにも落ち度はある」


 堀は調書をめくりながら言った。


「随伴の杉浦くんも、あんたが運転席にいたって言ってる。それもいい」


「はい」


「代行ってのはな、客が最後だけ自分で運転したがるって話、よく聞くんだよ。車庫入れだの、家の前だの」


「うちは、やりません」


「そうか」


 堀は顔を上げなかった。


「助手席の兄ちゃん、ずいぶん震えてたな。同乗してただけにしちゃ」


「人が轢かれるのを見たんです。誰だって震えます」


「あんたは震えてなかった」


 遠山は答えなかった。堀はビニール袋に入った所持品の目録を指でたどった。


「財布。携帯。車のキー二本。それと、胸ポケットに一万円。財布とは別に」


「チップです」


「何のチップだ」


「あの客は、いつもくれるんで」


 堀はしばらく遠山の顔を見ていた。それから目録を閉じた。


「篠原建設の息子だろ。あそこの社長は、うちの署にも顔が利く」


 それが嫌味なのか、忠告なのか、遠山にはわからなかった。

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