英雄が来なかった町 ―三百十二人を数えた記録官―
最終エピソード掲載日:2026/08/10
山と川に挟まれた宿場町レフナで、小さな異変が続いていた。
井戸水の濁り。 温かくなった地下倉庫の壁。 街道に走る亀裂。 山から姿を消した獣たち。
中央監査庁の若い記録補助官ユスト=カレルは、それらが一つの災害の前触れではないかと疑う。
しかし、ユストには町を避難させる権限がない。
守備隊長は町長の命令を待ち、町長代理は鉱山技師の判断を待つ。医務官は患者を治療できるが、町全体を動かすことはできない。
誰も町を見捨てようとはしていなかった。 誰もが、自分にできる仕事をしていた。
それでも、誰が最初に避難を決めるのかだけが、どこにも書かれていなかった。
やがて町は、近隣を巡る英雄へ救援を求める。
英雄が来れば、きっと助かる。
そう信じる人々の中で、宿屋の少女リナがユストへ尋ねた。
「英雄が来なかったら、誰が鐘を鳴らすの?」
これは後に、人を救う制度を作る整序官となった男が、三百十二人の名前を数えた夜の物語。
井戸水の濁り。 温かくなった地下倉庫の壁。 街道に走る亀裂。 山から姿を消した獣たち。
中央監査庁の若い記録補助官ユスト=カレルは、それらが一つの災害の前触れではないかと疑う。
しかし、ユストには町を避難させる権限がない。
守備隊長は町長の命令を待ち、町長代理は鉱山技師の判断を待つ。医務官は患者を治療できるが、町全体を動かすことはできない。
誰も町を見捨てようとはしていなかった。 誰もが、自分にできる仕事をしていた。
それでも、誰が最初に避難を決めるのかだけが、どこにも書かれていなかった。
やがて町は、近隣を巡る英雄へ救援を求める。
英雄が来れば、きっと助かる。
そう信じる人々の中で、宿屋の少女リナがユストへ尋ねた。
「英雄が来なかったら、誰が鐘を鳴らすの?」
これは後に、人を救う制度を作る整序官となった男が、三百十二人の名前を数えた夜の物語。
第1話《小さすぎる異常》
2026/08/05 21:42
第2話《誰の仕事でもない》
2026/08/06 22:00
第3話《鐘を鳴らす者》
2026/08/07 22:00
第4話《英雄が来なかった夜》
2026/08/08 22:00
第5話《三百十二》
2026/08/09 22:00
最終話《名前を数える夜》
2026/08/10 22:00