お金持ちと力持ち

　身の丈数メートルの生物が野を駆け、一呼吸の内に死に至る毒の花粉を放つ花が生育する様な広大な大地。

　そんな世界に点在する大国の一つに｛ウィザード王国｝がある。

　名前の由来は国を統べた初代王が魔法使いだったからだと言われているが、現在、この世界に“魔法と呼ばれるものが存在しない”ためその話も眉唾物である。

　ウィザード王国は海と隣接しており、港を使った海上貿易が盛んに行われている。
　それにより国の航海技術は発展し、産業革命へと突入した。

　民衆は石炭で暖やエネルギーを確保し、熱によって動力を得る。
　街中敷かれた石畳には馬車が走り、国の各所には工場が建ち並ぶ。
　国の兵士は最新鋭の単発式長銃に銃剣を携え、長射程を誇る大砲が軍艦に配備される。

　そして、この発展目覚しい国を支える企業達の中に、決して欠かすことの出来ない企業が一つあった。

　それが｛アドレグループ｝である。

　この物語は、そのアドレグループの新会長｛ゼイア・アドレメナク｝の人生である。